2014年度予算編成をめぐり、各省庁や自民党議員と財務省の攻防が激化している。旧来型の公共事業や族議員の予算分捕り合戦が復活の兆しを見せる中、中期財政計画には暗雲が漂っている。

 日本の国土を弱体化させていたのは、イノシシだったのか!?

 鳥獣による農作物被害をご存じだろうか。イノシシ、シカ、サルなどの野生動物が畑の野菜を食べ荒らしてしまうことなどによる被害推定額は、ここ数年、毎年200億円程度で推移している。

 こうした被害を防止するための国家予算は、2008年度に初めて28億円を計上。以降、ほぼ同額で推移していたが、東日本大震災直後の11年度に前年度比約5倍の113億円に急拡大した。最近では、イノシシを捕獲するための機材には頭数や獣種を判別するスマートセンサーがついており、うりぼうだけなら捕獲しないことも可能だそうだ。

 そして、今まさに大詰めを迎えている14年度予算案。各省庁から出そろった概算要求では、この鳥獣被害防止対策として、「国土強靭化」関係予算の名の下に100億円、要求されている。

 国土強靭化とは、東日本大震災を契機に、平時から事前の備えが必要として安倍内閣が推し進めている防災・減災政策だ。昨年12月に「国土強靭化担当大臣」を設置し、今年1月には内閣官房に「国土強靭化推進室」を新設するなど力を入れている。2月の施政方針演説では安倍晋三首相が、「命を守るための国土強靭化が焦眉の急です」と強調したほどだ。

 その中に、イノシシ被害防止が臆面もなく盛り込まれたことに「これが国民の命を守るための国土強靭化対策なのか」と、首をかしげる政府関係者は少なくない。

 このほか「国営公園等事業」(298億円。国土交通省)、「低炭素価値向上に向けた社会システム構築支援基金」(125億円。環境省)など、一見して国土強靭とどんな関係があるのか不明なメニューがずらりと並ぶ(図参照)。