ホンダはどこまで電気自動車に本気か?<br />コンセプトカー「EV-N」の秘密に迫る
東京モーターショーで電気デバイスシリーズ「HELLO」を発表するホンダの伊東孝紳社長。

 「電気自動車は、ホンダらしくない」。

 この1年ほどの間、日本、ドイツ、ノルウェー、アメリカで筆者がホンダのエンジニア各位に取材をしていて、話題を電気自動車に振ると、皆一様にこの言葉を使った。

 彼らが「ホンダらしくない」、という根拠は以下の点が挙げられる。

①現時点で、量産可能なレベルでの、他社と大きく違った技術革新がしにくい。
②構成部品が少なくなり、他社との差異が見出しにくい。
③ASIMOによるロボット技術の研究開発は進めているが、スポーティ性を追求してきたガソリン車でのホンダのイメージを、電気自動車に結びつけていくには諸策が必要だ。

 そうしたなか、2009年8月22日(土)日本経済新聞をはじめとするメディアが、「ホンダが2010年代前半に北米で、軽自動車サイズの電気自動車を投入。プロトタイプを10月の東京モーターショーで公開」と報じた。

 そして迎えた、東京モーターショー。ホンダの展示ブース、客席側から向かって左手に、見慣れない「HELLO!」の文字。その前に、ホワイトボディの電動移動体が3つ並んだ。HELLO!とは、"H"onda "El"ectric mobility "Lo"opの略。筆者の正直な感想を言えば、かなりキツイ語呂合わせ、である。

 展示された電動移動体で、初お目見えとなったのが、先に日経新聞がすっぱ抜いた、軽自動車サイズの電気自動車、EV-N。ひと目で、往年のN360がデザインモチーフであることが分かる。全長x全幅x全高=2860x1475x1515mm、ホイールベースが1995mm。モーター出力、蓄電池関連の広報発表はない。その前には、これまたデザイン原型がすぐに想像がつく、カブの電動版、EV-Cub。加えて、すでに市販されている高齢者などへの医療用小型電動4輪車、EVモンパル。

 さらに舞台には、日米ですでにリース販売されている、FCXクラリティ。こちらは、これまで燃料電池車という名称を、燃料電池”電気自動”車に改名した。確かに、福井威夫・ホンダ前社長は、ホンダの電気自動車開発の可能性について聞かれると決まって「燃料電池車も電気自動車だ」と言っていた。