株式レポート
12月24日 18時0分
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2014年日本株式市場展望 PART 2 - 広木隆「ストラテジーレポート」

長期金利は緩やかに上昇

PART1では、「株価は業績と金利の関数である」と述べた。

株価 = 業績/金利 … 式(1)

そしてPART1では主に分子の企業業績について述べたので、PART2では分母である金利を中心に議論すると予告した。その中核は来年の最大の投資テーマになると考える日銀の追加緩和であり、それによって大きく相場展開が異なる2つのシナリオを提示すると述べた。

その前に、もう一度、式(1)を確認しよう。
株価は業績の伸びに比例して上昇するが、金利の上昇は株価の下落要因となる。式(1)の両辺を業績で割って、式(2)のように変形すれば、金利上昇(分母の拡大)はバリュエーションを低下させ、株価の頭を抑える働きをすることが分かる。

PER(株価収益率) = 株価/業績 = 1/金利 … 式(2)

長期金利は緩やかな上昇を辿るだろう。それはバリュエーションの上昇を抑制し株価の重石となる。しかし、金利の上昇ペースが緩やかなものに保たれる限りは、深刻な悪材料にはなるまい。要は業績拡大と金利上昇の兼ね合い、バランスの問題だ。金利が上昇する分だけ、業績拡大を反映して株価が上がるペースを削ぐことになるが、むしろそれは健全な株価形成のあり方だと言える。

長期金利は緩やかな上昇を辿ると述べたがそれは「道理」というものだ。日銀が2%の物価目標を掲げて金融緩和を続けている。当初「2年で2%」とのコミットメントを示したわけだから、市場では「2年で2%」は難しいという声が上がる。では、「2年」にこだわらなければどうだろう。先日、今年最後の金融政策決定会合後に開かれた記者会見の席で、黒田日銀総裁は「金融政策はオープンエンドか」と問われて、「そうだ。量的質的金融緩和を決定したときからいつも、2%の物価安定目標を実現し、安定的に持続するまで継続すると言っている」と答えた。早晩、日銀はこのオープンエンドの金融政策、時間軸の延長を正式に表明するだろう。この点は結構重要なので後でまた触れたい。

物価が上がるまで金融を緩和する、というからには、いつかは物価は2%まで上昇するだろう。既に物価は上がり始めている。足元では生鮮食品を除く消費者物価指数(CPI)が前年比で0.9%上昇し、黒田総裁は「年内には1%を若干上回る可能性が高い」と述べた。日銀が10月の「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で示した14年度見通しの中央値である1.3%(消費増税の影響除く)も視野に入る。黒田総裁は「これまでの経済・物価の動向は極めて順調に想定している」と表向きは余裕の表情である。

長期金利の決まり方

長期金利はどう決まるか。金利の期間構造(タームストラクチャー)モデルの背景には重要な3つの理論がある。
1. 期待理論
2. 流動性プレミアム仮説
3. 市場分断仮説
の3つであるが、ここでは1. の期待理論を簡単に紹介しよう。ほかならぬ、日本銀行のホームページには「長期金利の決まり方」について述べているコンテンツがある。日銀自身がとても平易な語り口で解説しているので是非参考にされたい。

https://www.boj.or.jp/mopo/outline/expchokinri.htm/

<長期金利は、その時点の金融政策の影響も受けはしますが、それとは別の次元で、長期資金の需要・供給の市場メカニズムの中で決まるという色合いが強く、その際、将来の物価変動(インフレ、デフレ)や将来の短期金利の推移(やこれに大きな影響を及ぼす将来の金融政策)などについての予想が大切な役割を演ずる、という特徴があります。>
(日本銀行ホームページ「長期金利の決まり方」)

将来のインフレ予想が長期金利を動かすという。だから市場で2%のインフレ予想が高まれば長期金利はその水準に向かって上昇すると考えられる。物価が上がって金利が上昇しなければ、実質金利が低下する。現在、10年債利回りは0.7%なので0.9%のCPIとの比較においては既にマイナスの実質金利である。例えば、2%のインフレ時に長期金利が1%、実質金がマイナス1%というのは水準感としてあり得ないと思う。そんなことになったら強烈なバブルが生まれるだろう。タダ同然のカネを調達してモノに突っ込めば鞘が抜ける。レバレッジ天国。そんな状況が常態化するわけがない。
国債の売り材料と買い材料

債券の主要プレーヤーも国債離れを始めている。日本証券業協会が発表した11月の公社債投資家別売買動向によると、大手銀行の売越額は9754億円。10月の売り越し額3兆236億円に比べて3分の1以下に縮小したものの、売り越しは8カ月連続だ。

他にも気になる国債の売り材料がある。財政規律の緩みである。診療報酬や公共事業、防衛費など歳出の主な項目は軒並み増額される。本日、閣議決定する一般会計の規模は約95兆9千億円と今年度の当初予算を3.6%上回り、過去最大になる見込みと報じられている。

じわりと進むインフレ期待。大手銀行の国債離れ。そして財政規律の緩慢化。これだけの材料が並べば長期債利回りは「緩やかな上昇」では済まされず、急上昇してもよいのでは?と思われるかもしれないが、そうはならない。国債の売り材料の一方で、買い材料もあるからだ。

まず歳入増により国債発行が減る。消費増税の4兆円強に加え法人税などが7兆円近く伸びるからだ。新規の国債発行は41兆2500億円と13年度当初予算に比べて1兆6千億円減る。これは言うまでもなく国債市場の需給タイト化要因である。しかし、その中身は機関投資家からの需要が強い超長期債と物価連動国債は増発、2年債など中短期が減額で10年債は据え置きという内容だ。だからこれは長期金利への需給面でのプラス材料というにはインパクトが弱い。国債発行は2年連続で減るものの、発行はするわけだからその総額はついに780兆円に達する。しかし、国債依存度は43%台に低下し、基礎的財政収支の赤字幅は5.2兆円縮まる。借金体質からの脱却には程遠いとは言え財政健全化への一歩と捉えられなくもない。少なくとも収支改善には違いないから、それだけでも国債の売り要因はひとつ後退する。

大手銀行は国債頼みから徐々に離れつつあるが、地銀はそうはいかない。地方の資金需要は強くなく、大手行と違って海外融資を伸ばすなど国債に替わる収益源が見いだせないからだ。11月の公社債投資家別売買動向で、大手銀行が1兆円近い売越となった一方で、地銀は7000億円超の買い越しで業態別の買い越しトップとなった。

しかし国債の買い手の主役は地銀ではない。もちろん、日本銀行である。日銀による国債買いは今や、新規発行の7割を占める。日銀が発表した7〜9月期の資金循環統計によると、9月末時点の日銀の国債保有残高は前年比6割増の170兆円。国債残高に占める日銀の保有比率(シェア)は1年前の11.1%から17.4%に急上昇し、保険会社の19.6%に迫る。保険を抜いて日銀がシェアトップ、最大の国債保有主体になるのは時間の問題である。

ここに最大の矛盾がある。日銀は2%の物価上昇目標を掲げる。そうであれば長期金利は2%に向かって上昇するはずである。ところが、市場で日銀が国債を買いまくるから金利は上がらない。日銀の意図は、物価が上がり金利は上がらないという実質金利マイナスの世界を作り出すことなのか。そんなはずはあるまい。

ものごとはシンプルに考えるべきだ。日銀が国債を購入し量的緩和をしているのはデフレからの脱却、インフレ目標を達成するためである。だから、国債を買って低金利に抑えるというのは手段であって目的ではない。目的である2%のインフレが実現するには金利上昇が当然であり道理である(この点は日銀自身がホームページで述べている通りだ)。

であるなら今後の日銀のスタンスとしては緩やかな金利上昇を容認するだろう。米国では量的緩和縮小が決まった。これは素直に考えれば米国金利の上昇要因だ。であるならば、日本の金利が若干上昇しても金利差から円高に巻き戻るリスクは少ない。その意味でも日本の長期金利の緩やかな上昇は許される環境が整ったと言えるだろう。

株価を決める要因、「業績」と「金利」のうち、今回は金利についてレビューした。本当は、2014年の株式相場のシナリオを考えるうえで最も重要な要因、日銀の追加緩和について述べるはずだったが、その前置きとして、ここまでの議論が必要だった。このまま一気呵成に語ってもよいが、読者のほうが消化不良になる恐れもある。今日はここでとどめてPART3でそのシナリオを展開したい。メリークリスマス。素敵なイブを。


(チーフ・ストラテジスト 広木 隆)

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