産業の未来を大きく左右
日本にとってのメリットとデメリットは

 日本経済の未来が託されていると言っても、過言ではない。それが「TPP」(環太平洋戦略的経済連携協定)だ。TPPは、太平洋地域における経済の自由化を目的とした、各国による多角的な経済連携協定 (EPA)のこと。目標は、参加国間で新たな一大経済圏をつくることである。

 TPP交渉への参加については、民主党政権時代から議論が始まり、日本中で賛否両論が噴出した。今年3月、自民党の安倍首相はTPP交渉への参加を正式に表明し、日本は7月からTPPラウンドに参加することとなった。

 そもそもTPPは、シンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4ヵ国間で調印され、2006に発効した協定であり、日本や米国などは、2010年から始まった原加盟国との拡大交渉会合に加わる立場にある。2011年には、交渉の輪郭が「大枠合意」として発表されている。

 しかし、新たな交渉参加国を含めての最終的な意見調整は難航中だ。TPPは経済の自由化促進によって参加国に大きなチャンスをもたらす一方、各国固有の規制や商慣習が撤廃されることにより、自国の基幹産業が衰退する恐れもあるからだ。

 日本にとってのTPPのメリットとデメリットとは何か。

 メリットとしては、関税撤廃による貿易の自由化で商品やサービスの輸出額が増えること、またそれに関連して海外展開を進める日本企業の企業内貿易が効率化され、利益が増えることなどが挙げられる。こうした「経済のグローバル化」により、日本のGDPは向こう10年間で3兆円以上増加するという試算もある

 一方デメリットとしては、関税撤廃によって安価な商品・サービスが日本に流入し、農業をはじめとする基幹産業が熾烈な競争に晒され、深刻なダメージを受けかねないこと、食品添加物や残留農薬などの規制緩和によって、国内の「食の安全」が脅かされかねないこと、医療保険の自由化や混合診療の解禁によって国保制度の圧迫や医療格差が広がる恐れがあることなどだ。