現在の電気自動車ブーム。その“火つけ役”は、明らかに日産自動車である。世界の自動車メーカーが本格的な量販には二の足を踏むなかで、なんと世界的に万を超える規模で量販すると宣言したからだ。勝算はあるのか。カルロス・ゴーンCEOに聞いた。(聞き手:『週刊ダイヤモンド』編集部 山本猛嗣、柳澤里佳)

カルロス・ゴーン
撮影:住友一俊

――日産自動車は、今年度からの中期経営計画で、電気自動車などのゼロエミッション車(排ガスゼロのクルマ)でリーダーになることを宣言しています。

 かつて電気自動車の普及は失敗に終わりましたが、現在は事情が明らかに異なります。社会の関心事は、うなぎ登りに上がるガソリン価格や、地球環境問題に集中しています。電気自動車は、石油に依存せず、二酸化炭素も排出しない。まさに、2つの問題に対応できるものです。

 日産には、長年にわたって取り組んできた電池や電気自動車の技術があります。これら内外の要因を見れば、戦略的に日産がやると決めた理由も、私の情熱もおわかりになるでしょう。

――日産は電気自動車を2010年度に日米で、12年度には世界的に量販を始めます。最終的にはどのくらいの台数を販売するのですか。

 まだなんともいえません。電池を開発したり、イスラエル政府などとも販売の契約を交わしたばかりです。電気自動車を投入するための条件は整いつつありますが、そのほかは決まっていないことばかりなのです。

 10年度の投入については、日本では神奈川県、米国ではカリフォルニア州が中心となります。規模としては数千台規模、いやいや、数字については申し上げるのはやめましょう(笑)。つまり、私が言いたいのは、大量生産するということなんです。

 自動車メーカーは、一定の最新技術を見せ、それで「棚上げ」ということがよくあります。でも、日産は違います。本気です。電気自動車を“パレードのため”ではなく、コアビジネスとして扱います。世界初の量販メーカーになることが目標です。最初は1車種から始め、いずれラインナップを揃えます。