サントリーホールディングスが世界有数のバーボンウイスキー、ジムビームなどの製造元ビーム社を約1兆6800億円で買収する。蒸留酒事業世界3位に浮上するが、そのリスクも大きい。

成長を求めて巨額M&A <br />サントリー“最後の賭け”「ジムビーム」「メーカーズマーク」などを生産する米ウイスキーメーカー、ビーム社を買収するサントリー。佐治信忠社長(右上)は巨大M&Aを成功させられるのか
Photo by Ryo Otsubo、JIJI
拡大画像表示

 サントリーホールディングス(HD)は13日、米国の大手酒類メーカーのビーム社を160億ドル(約1兆6800億円。1ドル105円で換算、以下同)で買収することに合意したと発表した。

 かねて「成長のためのM&Aは機会があれば積極的に行う」(佐治信忠・サントリーHD社長)と宣言し、実行してきたサントリーHDだが、今回は額が1桁違う。1980年代からサントリーグループが行ってきた海外M&Aの総合計額を上回るのだ。

 買収額のうち1兆円以上が銀行借り入れによる調達となる。この巨額の資金調達は、昨年7月に子会社のサントリー食品インターナショナルが上場したことによるところが大きい。

 この上場でサントリーHDは、手持ちの同社株売却益などで4000億円超のキャッシュを手にし、実質無借金状態を達成したのだ。

 非上場のサントリーHDは創業以来、借金依存度が高かった。約1年前の2012年期末時点でのD/Eレシオ(有利子負債÷株主資本)で同業他社と比較すると、アサヒグループHD0.66、キリンHD0.99に対して、サントリーHDは1.14だった。

 そのため、「これまであまたの投資案件が持ち込まれたが、負債比率が高過ぎて断念したことが多くあった」(金融関係者)。

 実はビーム社もそんな案件の一つで、1年ほど前からサントリーHDは検討していた。一時は産業革新機構との共同買収というスキームが浮上したが、頓挫。それが、前述の財務改善で資金調達が可能となり、今回の決定になった。