「江戸に烏の鳴かぬ日はあれど、納豆売りの来ぬ日はなし」――。

 これは和歌山藩士が勤番の折に書き記した『江戸自慢』の中の一節です。

 この後、「土地の人の好物なる故と思はる」と続くのですが、このように江戸の町では毎朝、夜明けと共に納豆売りが長屋の隅々までやってきました。

江戸っ子の朝餉を彩る「納豆」は<br />晩年の利休も愛した滋養食<br />味噌納豆
【材料】納豆…1パック/味噌…大さじ1/酒…大さじ1/砂糖…小さじ1/七味唐辛子…少々/刻み海苔…少々
【作り方】①納豆は庖丁で叩いておく。②鍋に味噌、酒、砂糖を入れて煮溶かし、泡立ってきたら納豆と七味唐辛子を加えて混ぜ、火を止める。御飯やお粥、豆腐などに乗せて、刻み海苔をかける。

 それも、叩いた納豆と、刻み葱や練り辛子などの薬味も持ってきてくれたので、おかずとしてはもちろん、具なしの味噌汁さえ作っておけば、すぐに納豆汁が出来上がる、というわけです。

 江戸の一般家庭では、朝に一日分の御飯を炊く習慣があったため、炊きたての御飯+納豆汁+漬け物、もしくは同様に毎朝売りに来た蜆の汁+納豆が、朝餉の定番メニューでした。