安倍総理は、ダボス会議で法人税改革の実行を公約したが、実現に向けての道筋は簡単ではない。なぜなら、経済界・自民党税制調査会の本音は、全体の税率引き下げより自社の実効税率の引き下げにあり、財務省もネットの減税は避けたいので、三者の利害が一致しているからだ。これを突き破る論理と実行力が必要とされる。

改革阻む鉄のトライアングル

 安倍総理は、本年1月のダボス会議で講演し、「本年、さらなる法人税改革に着手する」との国際公約を行った。時を同じくして、経済財政諮問会議でも「現在35%程度の税率を25%程度まで引き下げることを目指し、速やかに検討すべきだ」との提言が行われ、新聞報道によると、自民党税制調査会でも法人税改革議論がスタートするという。

 総理が強い意欲のもとで国際公約し、経済財政諮問会議も後押ししているにもかかわらず「法人税改革」の実現のめどは立っていない。それはなぜだろうか。

 私はこれまでの連載(例えば64回)の中で、わが国の法人税改革ができない理由は、税率引き下げより効果のある租税特別措置(以下、租特)を好む経済界(大企業)と、租特に○×をつけることがレゾンデートルの自民党税調と、ネット減税につながる法人税率引き下げに消極的な財務省の利害が一致しており、いわばトライアングルができていることがその原因であると述べてきた。

自民党税調に出された財務省の2枚の資料

 その理由を説明する2枚の図表がある。

 1枚目は、「法人税負担」大法人のケース、と題する図表である。これは、財務省が昨年11月6日の自民党税調勉強会に提出した資料の中の一枚である。