今回と次回は、自らの愛され方を会社に提案し、結果として会社を変えるムーブメントを引き起こした、2人のミドルの事例を紹介する。2人とも、広告会社、博報堂の社員だ。私は同社で、CD40sという、自らのキャリアを発見するための社内研修のお手伝いをしている。2人ともその受講生だった。

 最初の1人は、今宿裕昭氏。MD統括局のストラテジックプランニングディレクターである。彼は、東北の被災校を支援するためのウェブベルマークの仕組みを提案した。

「ベルマーク+アフィリエイト広告」で
被災地支援に乗り出した

 ウェブベルマークは、ウェブベルマーク協会のサイトでマイページ登録したうえで、そのサイトを経由して協賛企業から商品を購入、あるいは資料請求などをすると、その売上などに応じて、販売元の協賛企業から一定額が自動的に協会に寄付され、東日本大震災の被災地3県の小中学校および特別支援学校のために用いられるというものだ。

 この金額が意外と大きいことに驚く。たとえばある企業のキャンペーンでは、資料請求をすれば450円が寄付される。あるいは別の人材斡旋会社に特定職種のプロフェッショナルが登録すると、1件辺り1万5000円が寄付されるという。

 裏に走っているのはアフィリエイト広告の仕組みだ。たとえば協賛企業の旅行サイトに、直接依頼するのではなく、このサイトを経由して宿の予約をする。そうすると、紹介料が発生して、そのお金が協会に寄付され、ベルマーク教育助成財団を通じて被災地の小中学生などのために使われるのだ。

 ウェブベルマーク協会は、公益財団法人であるベルマーク教育助成財団と、博報堂、博報堂DYメディアパートナーズ、朝日新聞社、タグボートの5社が作った協会だが、仕掛けたのが博報堂の今宿氏であった。

 彼は、決して雇用保蔵された人材ではなかったし、会社から愛されていなかったわけでもない。広告制作の現場で長年、活躍していた。しかしそれでも、彼は自らの愛され方を通して、会社に、全く新しい社会貢献運動を提案することになる。

 彼は長年、マーケティングプランニングセクションにいて、主に3つのクライアントの広告案件の企画制作を担当していた。40代はじめに、博報堂がTBWAという世界最大の広告会社グル―プの日本法人との間で合弁会社の立ち上げに際し、先輩に誘われて、それまでとは違う「制作」という立場で出向する道を選んだ。変化を求めたのだ。