日本人の2人に1人は何らかのアレルギーを持ち、今や「国民病」になっている。花粉症、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、ぜん息などさまざまなアレルギーの治療最前線からビジネス動向まで最新事情を追った。

増えるアレルギー患者
スギ花粉症は3000万人!

 1月20日、JT傘下の製薬会社である鳥居薬品の株価はストップ高となった。前週の金曜にスギ花粉症治療用の花粉エキス「シダトレン」について、厚生労働省から国内製造販売の承認を受けたことが好感されたものだ。

 金曜からこの週明けにかけて、同社にはかつてない数の問い合わせが殺到。電話が鳴りやまなかった。病院関係者からは治療を実施する体制を整えたいということで承認内容の詳細情報を求められ、スギ花粉症患者からは治療が受けられる医療機関の案内を求められ、投資家からは業績へのインパクトを期待を込めて尋ねられた。

 さまざまな種類のアレルギー薬が販売されているが、シダトレンは全く毛色が異なる。抗ヒスタミン薬など既存のクスリは、目のかゆみや鼻水、鼻詰まりなどの症状を一時的に抑える対症療法。対して、シダトレンは「舌下免疫療法」というスギ花粉症の根治を目指す治療に使われる。

「唯一根治の可能性がある免疫療法は、アレルギー治療を激変させる」と専門医たちは期待を込める。根治療法への待望論が膨らむ背景には、スギ花粉症などアレルギー患者数の急増がある。

 患者数を減らす予防法も治療法もないまま、スギ花粉症の有病率は10年間で急増した。1998年に16.2%だったものが2008年には26.5%となり、10.3ポイントも上昇した。

 今や国民の4人に1人、およそ3000万人がスギ花粉症患者になっているのだ。一度発症すると大半は治ることがないので、雪だるま式に増えてきた。

 問題はスギ花粉症だけではない。アレルギー性鼻炎全体で見ると、有病率は98年の29.8%からさらに上昇し、08年では39.4%に達している。

 食物アレルギーは小・中・高等学校で有症率4.5%まで増え、有症者数は約45万人に上る。食物アレルギーは大人でも増えている。

 実は食物アレルギーの治療も、常識が百八十度転換する激変ぶりを見せている。スギ花粉症の舌下免疫療法と同じように、“治す〟ための「経口免疫療法」が一部で始まっている。

 そもそもアレルギーにはどんなものがあるのか。

 アレルギーは、花粉やダニ、動物の毛、フケなど環境中に広く存在するさまざまなアレルギー物質、時には食べた食物を自分の免疫が異物として認識して過剰反応し、炎症を起こすことによって発症する。気管支に発症すればぜん息、鼻粘膜に発症すればアレルギー性鼻炎、目の粘膜ならばアレルギー性結膜炎となる。

 多くのアレルギーには、IgE抗体と呼ばれる物質が関与しており、これにアレルギー物質が結合すると、ヒスタミンなどのさまざまなアレルギーを引き起こす化学伝達物質が作られる。

 アレルギーになりやすい体質の場合、乳児期のアトピー性皮膚炎や食物アレルギーから始まり、幼児期にはぜん息、思春期にはアレルギー性鼻炎など、成長に伴ってアレルギー症状が変わり、アレルギー症状が増えていく傾向にある。アレルギー疾患に順番にかかっていく様を行進に例えて「アレルギーマーチ」とも呼ばれる。最近はすべてのアレルギー疾患が低年齢化する傾向にあり、幼児期からぜん息や花粉症などのアレルギー性鼻炎を発症することがある。

国民2人に1人はアレルギー
治療・対策市場は1兆円超

 子どもも大人も発症し、国民の2人に1人が何らかのアレルギーを抱える現代、経済面でもビジネス面でもアレルギーの影響は無視できないものとなっている。2000年にまとめた旧科学技術庁の報告書は、スギ花粉症による経済損失が年間2860億円に上ると推計している。当時から患者数が倍増した現在、損失額は5000億円規模になっていても不思議ではない。

 ただ、アレルギーに悩む人口が多くなれば、ビジネスチャンスも膨らむ。アレルギーの治療や対策に関わる市場は拡大しており、医療用医薬品、市販医薬品、食品・飲料、健康補助食品、日用品・化粧品、家電・インテリアを合計するとすでに1兆円を超え、今後、さらなる成長が見込まれている。

 一方で、せっけん「茶のしずく(旧商品)」で約3000人が小麦アレルギーを発症したように、アレルギーのトラブルは頻発している。アレルギーに絡むリスクも無視できない。