今年1月、金融庁の畑中龍太郎長官が地方銀行の頭取たちに向けて語った言葉により、地銀界が騒ぎになっている。再編に向けて、具体的に動きださねばならないときが近づいている。

 1月中旬、地方銀行の頭取と金融庁との間で毎月行われている意見交換会の場は、いつにない緊張で張り詰めていた。

 それもそのはずだ。畑中龍太郎・金融庁長官が全国の頭取たちに、“爆弾”を投下したのである。

 複数の地銀関係者によれば、「経営統合などを経営課題として考えてほしい」と語ったという。要は、じり貧の経営から抜け出すために経営トップとして打つべき手を打て、ということ。それを、すごみを利かせた声音で伝えたといい、思わず息をのんだ頭取も少なくなかったという。

 もっとも、畑中長官が地銀の再編論者であることは、地銀関係者にとっては周知の事実だ。

 国内市場は少子高齢化で、減少する貸出先の奪い合いが激化、地銀の経営悪化は避けられない。かといってメガバンクのように、国内よりも利ざやが厚く、伸びしろのある海外を収益源にすることも難しい──。そんな地銀に明るい未来が待っているとはお世辞にも言えないのである。

 それだけに、特に昨年9月に新しい検査・監督方針を出してからは、「本当に持続可能なビジネスモデルを取れているか、よく考えてほしいと地銀には折に触れて伝えている」(金融庁幹部)。その選択肢として、金融庁の頭の中に「再編」の2文字が浮かんでいることくらい、誰もが気づいていた。

 しかし地銀にとって今回の爆弾は、二つの理由でこれまでとは破壊力が違った。

 一つは、「経営統合」という言葉が長官の口から初めてはっきり飛び出たことだ。これまでオブラートに包んだ表現がされてきただけに、「以前とはフェーズが変わった」とある地銀役員は身構える。

 経営統合の他に生き残りを可能にする妙案があるならそれでも許されるが、今回はそれを考える時間まで区切られた。というのも畑中長官は「『今年は答えを出す年にしてほしい』とも述べている」(金融庁関係者)のだ。それが経営統合を含んだ言葉であることも明白で、多くの地銀が面食らった。