500ユーロ札が使えない! 中国人おばさんに救われた!
バルセロナからパリへと順調に移動していくなか、私はひとつの問題を抱えていた。中国で人民元をユーロに両替したのだが、その時に手にしたのが500ユーロ札だったのだ。日本円で決済するクレジットカードはあまり使いたくなかったので、現地での支払いは現金で済ます計画だった。だがその500ユーロ札がまったく使えないのだ。
たしかに500ユーロは日本円で約7万円と大金だ。私も中国で両替した時、100ユーロ札でほしいといったのだが、手持ちがないと断られ、仕方なく500ユーロ札にしたのだった。どこかのホテルで受け付けてくれるだろうと考えていたが、これもまったく使えない。10ユーロの支払いで断られるのは理解できるが、300ユーロの支払いにも使えないのは正直困った。
最悪、パリのホテルでは使えるだろうと考えていた私は、そのパリで支払いに行き詰った。500ユーロ札は“ギャンブルマネー”と呼ばれているらしく、どうしても受け取ってくれない。あいにくその日は土曜日で、月曜日まで銀行も開いていない。
「こんな使えん金つくるなよ」と思いつつ外に目をやると、中華総菜屋があることに気が付いた。店ではこわもての黒人のおじさんと、中国人らしきおばさんが客の対応をしていた。
暇になったのを見計らって、500ユーロ札についておばさんに中国語で尋ねてみた。おばさんは南方訛りの中国語で、「あなた中国人? え、日本人なの?」と会話にのってきてくれた。ここで中国人のおばさんは耳を疑う言葉を発した。
「わたしが両替してあげるわよ!」
500ユーロ札をおばさんに渡すと、あっさり100ユーロ札4枚と20ユーロ札5枚に両替してくれた。これには本当に驚いたし感動した。たったいま会ったばかりの、しかも中国語は話せるけど日本人なのに、おばさんは私を信用して助けてくれたのだ。しかも、「店にはもう100ユーロ札はないけど、近くに中国人がやっている両替商があるから替えてきてあげる」とまで言ってくれた。
このおばさんには後日、ふたたび助けてもらうことになる。
ある日の朝、猛烈な吐き気と下痢に襲われた。完全な食あたりだった。水分補給のため水を買いに行く途中、ばったりおばさんに会ったので、食あたりになったことを話したところ、効果抜群だと指ツボマッサージをしてくれた。さらに、針をすると完璧ということで、鍼灸師を呼んでくれるという。さすがにそこまでお世話になるわけにもいかず、お礼を述べ断ったが、ツボマッサージが効いたのか1日で回復することができた。
このおばさんと話していると、いかに海外での華僑のネットワークが強いかよくわかる。たいていの問題は中国人同士のネットワークで解決できる。しかも同じ華人(私は日本人だったが)に対する同郷意識も非常に高く、相互扶助の精神にあふれている。
中国でここまで中国人にやさしくしてもらったことはなかったが、出身地や故郷ごとに同じようなネットワークと相互扶助があるのだろう。中国人の内面を学ぶことができた。
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