今回は、先日NECエレクトロニクスが発表した組み込み式の「超解像技術」を取材した。この言葉は造語で、実際はハードウェアによって画像を美しく見せるための技術のことを指している。デジタルカメラの写真を編集したことがある方は、「シャープネス」という処理をご存じだろう。ピントが合っていない写真をソフト的な処理で画質向上する機能だ。もちろん、ある程度の限度はあるのだが、ちょっとぼんやりした写真でも確かにくっきり見えるようになる。

「シャープネスは画像のエッジを強調するので、本来はありえないエッジが出てしまう可能性がありますが、超解像技術ではその点を防止する仕組みを採用しています」と語るのは、NECエレクトロニクス第1SoC事業部システムASIC事業部の松浦佳弘チームマネージャー。一般的なシャープネスよりは高機能だが、広義には「シャープネスの一種」といっても間違いではないだろう。

かなり満足できる高画質と表示速度

NECエレクトロニクスの「超解像技術」
NECエレクトロニクスの「超解像技術」で、古い画像がこんなにキレに。今後、デジタル家電への搭載が期待される。

 サンプルの写真をご覧いただくと、ぼんやりした画像がくっきりしているのがわかるだろう。取材にうかがってデモを拝見したが、確かに明確な違いがあった。パキッとした美しい映像に変化しているのだ。感覚的に言うなら、ちょうど「アナログ放送と地上デジタル放送の違い」くらいの差はある。

 とはいえ、技術の品質を宣伝するために用意された映像が美しくなるのは、ある意味当たり前とも言える。しかし、興味深かったのは、映像を表示しているWindowsのメニューまでもがくっきり映っていたことだ。これは確かに抜群の効果がある。デモでは、2台のディスプレイに同じデータを表示していたのだが、表示がまったく遅延しないのにも驚かされた。静止画だけでなく、動画を処理しても遅延しないのだ。実際にはある程度の処理時間がかかっているのだろうが、フレームレート以下の時間に収まっているので、まったく気にならない。ソフトウェアの処理では負担が大きく、必ず遅れが出るだろう。