橘玲の世界投資見聞録 2014年2月20日

古代ローマ時代からひもとく、北アフリカのベルベル人の来歴
[橘玲の世界投資見聞録]

北アフリカにゲルマン民族が侵入

 4世紀から5世紀にかけて、アジア系の騎馬民族であるフン族に押されてゲルマン民族が大移動をはじめ、異民族の度重なる侵入で西ローマ帝国は弱体化する。その混乱のなかでも、北アフリカは比較的平穏だった。だが当時、ドナトゥス派と呼ばれるキリスト教の分派が農村部を中心に広く信仰されており、カルタゴを中心とする正統派のローマカトリック教会と対立していた。

 帝政末期、北アフリカを統治していた将軍ボニファティウスに対し、東ローマ帝国が「アフリカ独立を企てている」と疑念を抱き、召喚命令を出したことから歴史は大きく動き出す。東ローマ帝国からの派兵を見越して、ボニファティウスはイベリア半島(スペイン)にいたヴァンダル族に兵を送ってくれるよう依頼した。

 ヴァンダル族はゲルマン民族の一派で、もともとはバルト海沿岸(現在のエストニア、ラトビア、リトアニア)に住んでいたが西へと押し出され、ピレネー山脈を越えてイベリア半島の南端、ジブラルタルの近くまで来ていた。ヴァンダル族はゲルマン民族のなかでも少数派で、定住しようとしては他の民族に押し出されてヨーロッパの西の端まで追いやられたのだ。

 ヴァンダル族の族長は、ボニファティウスの派兵要請を利用して、イベリア半島を捨てて北アフリカに移住することを決断する。

 このようにして紀元429年、10万人ちかいヴァンダル族がジブラルタル海峡を渡って現在のモロッコに移動しはじめた。それに対して北アフリカを守備するローマ軍は1万にも満たず、地中海沿岸の諸都市はたちまちヴァンダル軍に落とされ、439年にはカルタゴまでもが陥落した。ヴァンダル族の快進撃は、これまで異端として差別されてきたドナトゥス派が反乱軍として加わったからだった。こうして北アフリカは、ゲルマン人の国になってしまった。

南ヨーロッパから北アフリカに連れ去られ、奴隷になったひとたち

 紀元697年、イスラム王朝であるウマイヤ朝(ヨーロッパではサラセン帝国と呼ばれた)が北アフリカに侵攻し、711年にはイベリア半島の西ゴート王国を滅ぼして地中海の東・南・西を支配する。ポエニ戦争によって「ローマ人の海」としてひとつになった地中海は、これ以降、ムスリム圏とキリスト教圏に分かれることになる。

カサブランカのハッサン2世モスク。中央のミナレット(尖塔)は高さ200メートル  (Photo:©Alt Invest Com)

 この頃になると、かつての大穀倉地帯だった北アフリカも度重なる内乱によって荒廃し、気候の変化もあって小麦農園はほとんど壊滅していた。新しく支配者になったアラブ人にも、農業経営をする気はなかった。

 農業に代わって北アフリカのムスリム国の主要産業になったのが“海賊”だ。彼らは地中海沿岸の港を基地にして、シチリアや南イタリアの都市を襲い、略奪の限りをつくした。ムスリムにとってキリスト教徒は聖戦(ジハード)の対象で、各地の首長に利益の20%を収めることで海賊業は公認されていた。


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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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