給料上がらず物価上昇
消費者の厳しい懐事情

 どうせ買うなら1円でも安く――。

 消費税増税を機に、消費者の財布の紐はいっそう固くなり、値段に対する目はいっそう厳しくなることは間違いない。特に、洗剤などの日用品や加工食品などを買うときは、消費者は1円でも安い店を探すだろう。

 アベノミクスによる景気回復が続いているとはいえ、庶民にはまだまだ実感が湧かない。

 2013年の労働者一人が得た現金給与総額は一人当たりの月平均31万4054万円で、2012年の31万4127円から73円下回っている。また物価上昇分を除いた実質賃金指数を見てみると、2013年は前年比0.5%減だ。物価上昇のペースに、給与の上昇が追いついていない。

 厳しい懐事情を抱える庶民を相手に商売をする小売り業界は、当然ながら少しでも安くしようとする。そこで、横行する可能性が指摘されているのが、小売り業者による、納入業者への買いたたきなど、販売価格を安くするために行われるさまざまな不正行為だ。

 公正取引委員会は昨年6月に実態調査を実施。小売り業者と取引のある納入業者5万社に対して調査を行い、1万8971社から回答を得ている。そのうち、約1割の納入業者が消費税増税を見据えた事前の値下げ要求を、小売り事業者から要請されたと回答している。

 さらに同委員会は昨年11月に94業種15万事業者に対して、消費税の転嫁拒否に関する調査を行っている(回答者1万209社)。その結果、既に転嫁拒否を受けている、または今後転嫁拒否を受ける事を懸念していると回答した事業者は750社で、そのうち建設業30.5%、卸売業と小売業21.3%、製造業14.5%だった。

 また納入業者側から見て、すでに転嫁拒否を行っている、今後転嫁拒否を行うことを懸念されている買い手側の事業者は268社挙げられた。そのうち、建設業は25.7%、製造業23.5%、卸売業と小売業22.4%だった。