NHKは2001年、ETV「問われる戦時性暴力」で、左派の市民団体が主催した「女性国際戦犯法廷」を取り上げます。従軍慰安婦など旧日本軍の戦争犯罪の責任が昭和天皇にあるとして、活動家を中心とした検事団が弁護士抜きで天皇の犯罪を裁くという民衆法廷劇で、内容の当否は置くとしても、主催者が極端に偏った立場なのは明らかです。
案の定、放映前から右派の市民団体の強硬な抗議で社会問題化し、事態の深刻さに驚愕した経営幹部によって番組は大幅に編集されて放映されました。その後、朝日新聞が安倍晋三氏と故・中川昭一氏がNHK上層部に圧力をかけて番組が改変されたと報じ、NHKがそれを否定したことで泥沼の争いになっていきます。
今回の問題の根源は、NHKがこの事件の検証を怠り、「不偏不党」の原則をないがしろにしてきたことにあります。その結果、安倍政権に報復人事的な経営委員の任命をされ、こんどは「右に偏向している」との攻撃を浴びることになったのです。
NHKに社会的批判が集まると、受信料を払いたくないひとはそれを利用して不払いを続けることができます。歴史を弄ぶ者は歴史によって復讐され、正直者はいつもバカを見るのです。
『週刊プレイボーイ』2014年2月24日発売号に掲載
<執筆・ 橘 玲(たちばな あきら)>
作家。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。「新世紀の資本論」と評された『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部の大ベストセラーに。著書に『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 究極の資産運用編』『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 至高の銀行・証券編』(以上ダイヤモンド社)などがある。ザイ・オンラインとの共同サイト『橘玲の海外投資の歩き方』にて、お金、投資についての考え方を連載中。
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アベノミクスはその端緒となるのか!? 大胆な金融緩和→国債価格の下落で金利上昇→円安とインフレが進行→国家債務の膨張→財政破綻(国家破産)…。そう遠くない未来に起きるかもしれない日本の"最悪のシナリオ"。その時、私たちはどうなってしまうのか? どうやって資産を生活を守っていくべきなのか? 不確実な未来に対処するため、すべての日本人に向けて書かれた全く新しい資産防衛の処方箋。
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