「皆と寄り添って寝るのがうれしいの」

 国家警察の幹部という重責を担うジェーンの旦那、カーネル(大佐)はいつも未明の帰宅だ。たまには2~3日帰ってこないこともあり、そんなあとは24時間、部屋に閉じこもって寝ているのだが、それでもKIANはお構いなしに同じ部屋で大騒ぎをしている。これではカーネルも寝ているどころではないはずだ。

 だったらKIANを別の部屋で寝かせれば良いではないかとアドバイスしたが、ジェーンは「とんでもない」と相手にしない。家族はいつも一緒に寝るのが当たり前で、その原則が最優先なのだ。

 カーネルはといえば、周りでどんなにKIANが騒いでいても文句一つ言うわけでもなく、しずかに目を閉じている。

 タバコの農場に帰ったときは、ジェーンは母親や甥姪と農場のファームハウスのゲストルームの一室に寄り集まって寝る。総勢、20名程度に及ぶこともあるので、「別の部屋に分散して寝てはどうか」と言っても、「皆と寄り添って寝るのがうれしいのだ」と、耳を貸さない。家族が一緒に寝て、家族の絆を確かめ、幸せを味わっているのだ。

 フィリピンでは小さな家に大勢で暮らしているから、家族一同が狭い部屋にごろ寝せざるをえないのかと思っていたが、どうもそれだけではないようだ。

夫婦でツインベットはあり得ない!

 私はといえば、最初の子どもができたとき、夜泣きに耐えられず別室で寝ることにした。それ以来、夫婦別室が定常化して今に至っているが、確かに家族の絆というような思いはどこかへ置き忘れてきてしまったような気もする。

 商売柄、日本からフィリピンに来る退職者のホテルの予約をすることが多いが、ほとんどの夫婦はツインベッドを希望する。しかしフィリピン人の夫婦は、たとえ60~70歳になっても一つのベッドに抱き合って寝るのが普通だ。「別のベッドで寝よう」などと言い出したら、それこそ離婚に発展してしまいかねない。

 人類700万年、動物の時代も入れると数億年の間、家族はねぐらあるいは巣で身を寄せあって一緒に寝るのが当たり前だった。お互いの体温を感じる距離で寒さや飢えをしのぎ、災害や敵から身を守ってきた。それが家族というものなのだろう。

 核家族が当たり前になり、無縁社会が定番化している現在の日本に、体温を感じあう家族は果たしてありうるのだろうか。

子どもたちは、ベッドの脇などをシーツなどで囲って小さな部屋を作って中に入るのが大好きだ。テントを買って組立ててやったら、KIANは早速、中に皆を連れ込んでご機嫌だ【撮影/志賀和民】

(文/志賀和民)

著者紹介:志賀和民(しが・かずたみ)
東京出身。東北大学大学院修了後、日揮(株)入社。シンガポールにをかわきりに海外勤務を歴任。1989年日揮関連会社社長に就任しフィリピンに移住。2007年4月PASCO(サロン・デ・パスコ)取締役。

 

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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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