「運賃値下げの実現が難しいのならば、第二の公共交通を地域の皆さんでつくり出すのです。でも、バスを走らせるのは手段であって、目的ではありません。北総線に対抗することが目的でもありません」

 会場の人たちにこう語りかけたのは、交通権学会の前田善弘さん。基調講演で前田さんは、千葉ニュータウンの公共交通の現状と課題、そして解決策や参考事例などについて語った。それはこんな話だった。

 千葉ニュータウンは、北総鉄道の駅から遠いところから住宅開発が進められ、駅近くに商業施設などがつくられている。公共交通の中心は鉄道で、路線バスはそれを補うものとして位置付けられている。北総線の各駅への連絡が主目的で、鉄道に並行して走ることはない。鉄道が主、バスは従という棲み分けができていて、競合関係にない。鉄道、バスともに同じグル―プ会社による運行なので、事業者の論理としてはそれも当然と言える。

 だが、その結果の不利益を利用者が負うことになる。選択肢は乏しく、競争原理が働かないため、サービス改善も進まない。安くて手軽な移動手段がなく、車を利用できない住民は日常生活にも困るようになっている。

「新たな公共交通をつくろう!」
新路線バスの社会実験の評判は上々

 では、どうしたらよいのか。前田さんが示したのは、「安くて手軽な移動手段となる新たな公共交通を地域自身の手でつくり出す」というものだった。それが「生活バスちばにう」で、4月から実際に運行される予定となっている。北総鉄道と並行する路線バスで、千葉ニュータウンから都心に出るもう1つのルートを住民自らが生み出すのである。

 実は、住民グループは昨年10月にある社会実験を行っていた。前田さんや交通とまちづくりを専門とする湘北短期大学の大塚良治准教授らから「千葉ニュータウンにバスを走らせたら」とのアドバイスを受け、北総鉄道と並行して走る路線バスの運行実験に踏み切っていたのである。

 社会実験は、千葉ニュータウン中央駅から3キロほどの印西市高花地区と、東武野田線や新京成電鉄の乗り換え駅である新鎌ケ谷駅間にバスを走らせるというものだ。独立系の地元バス会社「鎌ヶ谷観光バス」の協力を得て、貸切バスの形で走らせたのである。