前回は、50代役定シニアを取り巻く周囲の見方と、シニアを“普通”に使いこなす上司のマネジメントや職場づくりのヒントを考えた。大切なことは、相互理解と対話の必要性であった。

 今回と次回は、これまで本稿を書きながら考えたことを総括しながら、今後のシニア雇用と個人のキャリアをより価値あるものにするための提言を行いたい。今回は7つある提言の中から、3つの提言をご紹介する。

【提言1】
65歳まで働くのが当たり前になってきた
しかしシニアの「過剰雇用」を常時チェックせよ

 昨年4月の高年齢者雇用安定法改正(高年法)から間もなく1年になる。改正の趣旨は、65歳までの雇用に関し、定年制の廃止か、定年の引き上げか、あるいは継続雇用制度で対応するかのいずれかを行わせるものであった。結果として、高年者の雇用確保措置を92%の企業で実施、その内訳としては81%の企業が継続雇用制度、16%が定年引き上げ、3%が定年制廃止であった(「高年齢者の雇用状況2013年6月時点調査」集計結果2013年10月30日発表)。

 この1年間の企業の取り組みとして、法改正に伴う人事制度・就業規則の手直しのほか年金支給年齢の引き上げに伴う補てん措置が検討されてきた。多くの企業で、40代・50代のミドル・シニア社員に対し、65歳までの継続雇用制度の浸透が図られ、多くの社員が定年後も何とか働けそうだという安心感をもっている。

 先の調査でも現実に60歳定年を迎えるシニア層は、76.5%が再雇用で働いており、ほぼ定年後、再雇用で働くことが当たり前の時代になってきた。高年法に準じたこの制度のおかげで、多くのシニアが雇用にありつけていることは言うまでもない。議論の余地はあるが、将来の年金財源の不足を雇用で補い企業貢献も兼ねた、まさに画期的な労働政策だ。シニアが、企業の経営活動を支える新たな人材資源となりうるかどうか、試行の10年が始まったといえるだろう。

 だが、一方では、この制度はシニアの過剰雇用の問題をはらんでおり、現実的にIT・通信・流通・販売などシニアの再雇用が難しい業界では、今後のシニア人材を社内雇用で賄うことが困難な企業も出始めている。