東地中海は、アフリカ大陸を南北に走る総延長7000キロにのぼる巨大な谷、大地溝帯(グレート・リフト・バレー)の北端に位置する。大地溝帯はアフリカ大陸を東西に分割するマントルの上昇によってつくられ、中央を深い谷が走り、その周囲が隆起してキリマンジャロなどの高い山が生まれた。

旧約聖書にも登場する死海は海抜マイナス418メートルと地表でもっとも低い場所にあるが、これも大地溝帯によってつくられた湖だ。死海やヨルダン渓谷の東側は高地になっているものの、そこは険しい山々によって分断されている。こうした地形では異なる神を奉じる諸部族が分住するようになるのは自然で、交易のための都市はできても地中海東岸一帯を支配する国家は生まれようもなく、周辺の大国に繰り返し侵略されることになったのだ。

茫漠の街・アンマン
アンマンの印象をひと言でいうと“茫漠”になる。どこが街の中心なのかまったくわからないのだ。
アンマンに似た都市を挙げるとすると、ローマだろう。よく知られているように、ローマはテヴェレ川東岸の7つの丘につくられた。
アンマンもまた丘と谷の複雑な起伏が特徴だが、その規模はローマよりもはるかに大きく、主要な丘だけでも20ちかくあるという。
アンマンのもうひとつの印象は、“誰もいない”というものだ。ガイドブックに“高級住宅街”とか“おしゃれな街角”などと書かれている場所を訪ねても、週末の午後にもかかわらず通りを歩くひとの姿はない。まるでゴーストタウンみたいだ。

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