橘玲の世界投資見聞録 2014年3月20日

ヨルダンの首都アンマンは、茫漠の街
[橘玲の世界投資見聞録]

 なぜこんなことになるのだろう。

 もちろんアンマンにも、町の中心と呼べるような場所はある。

 ヨルダンでは丘のことをジャバルJabalという。アンマンの多くの丘のなかでも、三方が急な崖になっているジャバル・アル・カラアは古来より要衝として知られ、堅固な城砦がつくられた。この地を征服した古代ローマはマルクス・アウレリウス・アントニヌス帝の時代にこの丘に壮大なヘラクレス神殿を建設し、東ローマ帝国の時代には正教の壮麗な教会が建てられた。

ヘラクレス神殿。三方が崖になっている丘の上にローマ時代につくられた     (Photo:©Alt Invest Com)

 ローマ人たちは次いで、神殿のある丘を下った低地に33列6000人を収容できる大規模な劇場を建設した。この低地はその周辺の丘につくられた住宅地を結ぶ歓楽街になり、さまざまな店が軒を並べた。それが現在のスークで、アル・フセイン・モスクのまわりに布地や家具、古着などを扱う店が集まって大変な活気だ。ところがこのスークをすこし離れると、たちまち通りは閑散としてしまう。

ヘラクレス神殿のある丘を下った低地に建設された巨大なローマ劇場    (Photo:©Alt Invest Com)

 山の手と下町のように、見晴らしのいい高台に権力者たちの屋敷がつくられ、湿気の多い低地が庶民の街になるのはどこでも見られることだ。だがアンマンの特徴は、住宅地に適した丘の数が多いことと、低地との高低差が大きく、ひとつの丘から別の丘までは徒歩で移動するのが困難だということだ。

 このような特徴を持つ街に、20世紀半ば以降、続々と難民たちがやってくることになった。

 最初は1948年のイスラエル建国と第一次中東戦争をめぐる混乱で、ヨルダン川西岸に住んでいたパレスチナ人の多くが東岸のアンマンに逃れてきた。1967年の第三次中東戦争はさらに多くの難民を発生させ、その結果、ヨルダンの人口におけるパレスチナ人の比率は7割に達することになる。

 1991年の湾岸戦争や2003年のイラク戦争では、国境を越えて多くの難民がイラクから押し寄せた。2011年から始まったシリア内戦でも多数の難民がヨルダンを目指し、その比率は2013年にはヨルダンの人口の1割に達したとされる。

 こうした難民のなかでも裕福なひとたちがアンマンに移り住もうと考えたとき、彼らは現地のひとたちといっしょに暮らすよりも同族だけで集まることを好んだ。そして都合のいいことに、アンマンには住宅地に適した丘がいくつもある。こうして郊外の丘に次々と新興住宅地がつくられ、茫漠とした街が生まれたのではないだろうか。

丘の上に住宅地が開発された街アンマン       (Photo:©Alt Invest Com)

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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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