ソフトバンクモバイルを傘下に持つ孫正義ソフトバンク社長が電気通信事業の経営者としての矜持を問われている。

 きっかけは筆者が、19日発売の『週刊現代』に寄稿した「ソフトバンク第2世代携帯400万台のセキュリティが破られていた」という記事だ。これにより、同社のPDC(第2世代携帯電話)ユーザー400万人の財産やプライバシーが侵されかねないリスクの存在が露呈し、進行中の総務省による調査でも、その可能性がほぼ確認されつつあるからだ。

 それにもかかわらず、当のソフトバンクモバイルは「暗号技術が破られたという具体的な事実は一切認識しておりません」と、リスクを矮小化する強弁を続けている。

 こうしたソフトバンクモバイルの態度には、業界内で「やはり、新参者で常識がない。何よりも通信の秘密の維持に全力を傾けなければならない電気通信事業経営の鉄則を踏み外している」と強い批判の声があがっている。

NTTドコモや総務省に
問題の責任を転嫁

 同社が、こうした態度を続ければ、電気通信事業法に基づく「業務改善命令」や「技術基準適合命令」などの発出が避けられないとの見方もある。

 簡単に記すと、筆者が『週刊現代』で報じたポイントは、音声通信であれ、データ通信であれ、PDCは技術的に暗号技術が破られており、対策を講じなければ、会話の中身はもちろん、データ通信も丸裸にされるリスクが出てきたということだ。

 この技術を開発したのは、携帯コンテンツの開発・供給などを本業としてきたアクアキャスト(本社東京港区、清水真社長)という情報ベンチャーだ。

 ラフに言うと、携帯電話の通信は通信中の高速移動を可能にするために、基地局間で個人を特定する信号がやり取りされているが、この信号には通信内容の本体部分より脆弱な部分があり、アクアキャストは、この部分から暗号を解読することに成功したという。

 同社は、この脆弱性を強化する技術について、NTTドコモと共同で特許を出願しており、今年2月には広く異論がないかどうかをチェックする特許の公開も始まっている。