昨年末に発生した名古屋市地下鉄駅でのアスベスト飛散事故をめぐって自治体側と事業者側で意見が対立し、原因究明が進まない。事故から2ヵ月が経過した2月中旬、ようやく原因究明を開始すると表明した。だが、その動きは鈍すぎる。事故の原因はいったい何なのか、専門家に聞いた。

遅々として進まない公的調査
独自情報から原因究明を敢行

 昨年末に名古屋市の地下鉄駅構内で超高濃度のアスベストが飛散した事故から約3ヵ月が経過した。だが、いまだに事故原因は特定されていない。

 本サイトで事件については報じてきたが、まず、今回の飛散事故を簡単に振り返ってみよう。

<これまでの記事>
名古屋地下鉄駅構内でアスベストが高濃度飛散 明かされぬ曝露実態と行政の不手際」(2014年1月6日)

原因究明めぐり異常な工事委託が浮上 名古屋市地下鉄アスベスト飛散事故で続く混乱」(2014年2月13日)

 この事故では2013年12月12日、名古屋市営地下鉄名城線・六番町駅構内の機械室から空気1リットルあたり710本という超高濃度のアスベストが飛散した。しかもアスベストはもっとも発がん性が高いとされるクロシドライト(青石綿)だったうえ、漏えいが起こったのは駅利用者の通行もある場所だ。おまけに漏えいは翌13日まで続いたとみられる。当然その間に駅を利用した人たちはアスベストに曝露してしまった可能性が高い。

 現地ではようやく原因究明が始まろうとしているが、その動きはあまりにも鈍い。しかも名古屋市に取材してみると、原因究明のためのポイントの切り分けが現段階では十分にできていないようだった。

 そこで公的な原因究明とは別に、アスベスト除去工事に詳しいコンサルタント2人に事故原因と対策について、市や施工業者から筆者が聞き取った情報をもとに解説してもらった。