インターネットによる情報検索、ショッピング、SNSでのつぶやきやコメントなど日々蓄積される大量のデータ。このビッグデータを活用し、“不動産市場の今”を読む研究が進められている。

「何千万円という高額商品であり、多くの人が購入後の価格の変動で泣いたり笑ったりするにもかかわらず、うわさに惑わされ、現在の市場動向がはっきりわからないまま購入を決めざるをえない。住宅市場というのは、そんなおかしな状況に置かれています」

不動産取引も<br />話題のビッグデータ<br />活用の時代谷山智彦●たにやま・ともひこ
野村総合研究所公共経営コンサルティング部上級研究員。専門は金融経済学、不動産ファイナンス、情報経済学など。博士(経済学)

 そう語るのは野村総合研究所(NRI)公共経営コンサルティング部上級研究員の谷山智彦氏。同氏が研究を進めているのがインターネットを通じて蓄積された大量のデータ(ビッグデータ)を利用して不動産市場の今を予測する「ナウキャスティング」という試みだ。

「不動産市場の関係者は『最近の不動産市場は……』という言い方をよくします。しかし、株式市場や為替市場であれば、今や誰でも日々リアルタイムに価格の変化を知ることができますが、不動産市場の場合、公的なデータとなると、少なくとも数ヵ月のタイムラグを経なければ最新の動向を知ることはできないのです」(谷山氏)

不動産取引も<br />話題のビッグデータ<br />活用の時代

 不動産という資産は個別性が強く、同じ不動産は存在しない。また同じ不動産が何度も取引されることは稀である。そのため不動産市場全体の動向を知るためには、個別のデータに何らかの手を加えることが必要になり、結果として公表するまでに数ヵ月のタイムラグが生じてしまう(図1—13)。

 例えば地価でいえば、国土交通省の「地価公示」は1月1日時点のものが約3ヵ月を経過した後にようやく最新数値として公表される。しかも、その公表は年に1回だけだ。

 その一方で情報検索、ショッピング、ツイッターやフェイスブックといったSNSなどから、インターネットを利用する個人の行動はほぼリアルタイムで知ることができるようになっている。このことに注目し、個人の行動から不動産市場の今を知る手がかりがつかめないかという試みが、昨年から始められた。