東京五輪の2020年に向け、情報通信の規制を見直す大議論が、総務省で始まった。約10兆円を稼ぎ出すNTTグループのあり方を見直す案も俎上に載せられるなど、NTTの「規制緩和」が話題となっており、競合他社は危機感をあらわにする。KDDIの田中孝司社長に聞いた。

KDDI社長 田中孝司 <br />とんでもなく強いNTTの規制緩和には断固反対だたなか・たかし
1957年大阪府出身。81年京都大学大学院工学研究科電気工学第2専攻修了、国際電信電話(現KDDI)入社。85年米スタンフォード大学大学院電子工学専攻修了。2003年執行役員、07年取締役執行役員常務、10年代表取締役執行役員専務、10年12月より現職。 Photo by Toshiaki Usami

── 一部報道で、総務省が携帯電話と自宅の固定回線を割安に提供する「セット割引」をNTTグループにも解禁する検討を進めていると出ました。NTTが1985年に民営化されて以降、初めて規制緩和に関する話が出た形ですが、どう受け止めていますか。

 いやあ、「いったいどうしたの」というのが本音ですよ。この話は、総務省から出たのか、NTT側から出たのかはよくわかりませんが、「NTTの規制をもっと緩和すればよい」という方向に議論が進んでいることがおかしいのです。

 確かにわれわれは、地域の固定通信系の会社と組んで、携帯電話と一緒に契約すれば、毎月1480円安くなる「auスマートバリュー」を展開しています。

 ですが、これで市場シェアに影響を与えたかといえば、残念ながらそうでもない。スマートバリューの契約者は2013年末で611万人になりましたが、携帯市場全体のわずか4%にすぎません。

 携帯大手3社で見た場合のau契約者のシェアは、14年1月末で29%です。これは、スマートバリュー導入前の12年1月末と比べ、わずか0.8ポイントしか増えていないんですよ。

 じゃあ、何がシェアに影響しているかといえば、iPhoneの導入時期ですよね。ソフトバンクが08年に入れ、われわれが11年に取り扱いを始めました。それでがんばってシェアを奪ってきたのですが、NTTドコモが13年に導入した途端、状況が変わりました。