ソチ五輪も終盤を迎えた土曜日の朝。フジテレビのニュース番組を見ていたとき、つけ睫毛の長い女子アナが「憎悪」を「ぞうあく」と読んでいた。

 病状が悪化する場合は「ぞうあく」と読むこともある。そのときのニュースは事件報道であったので、「ぞうお」と読むべきであろう。日本語というのは難しい。

 民主党の海江田代表がフェイスブックで、東京電力福島第1原子力発電所・元所長の追悼コメントに、「詳しく書く暇がない」と書いたところ、非難のフォローが殺到したという(日本経済新聞、2013年7月12日)。「いとま」と読めなかった人が、海江田代表に対して悪い印象を持ったらしい。

 メディアも、対岸の火事と感じたのであろうか。「いとま」と、ひらがなで表記するところが多くなった。やはり日本語というのは難しい。

 ところで今回は、上場企業の手元に70兆円(日本経済新聞、2014年2月22日)も積み上がっているとされるキャッシュに関連した話である。

 と書き始めて、「手元資金」と「手許資金」のどちらの表記が正しいのか、迷ってしまった。日本経済新聞の記事を調べてみたところ、「手許」で表記された記事は1本もなく、すべて「手元」で統一されていた。

 筆者はどちらの表記でもいいと思っていたのだが、メディアにおける用法はシビアなようである。日本語はどうにも難しい。

 さて、上場企業の手元にあるとされる70兆円はおそらく、直近の連結貸借対照表の現金預金勘定を集計したものであろう。連結キャッシュフロー計算書の期末現金残高を集計したものである可能性は低い。

 なにしろ、第1四半期と第3四半期の連結キャッシュフロー計算書を開示しない上場企業が多いからだ。