インドネシア 2014年4月9日

バリ男の血が騒ぐ! 今も続く伝統の闘鶏「タジェン」

金額単位もオッズも伝統の符牒のみ
よそ者には分からない複雑システム

 タジェンは鶏のオーナー同士の勝負に、周囲が乗るかたちで行なわれる。鶏のオーナーは互いの鶏の体型や状態を入念にチェックして、その格差や優劣が均衡になるよう鶏の脚に装着するタジの塩梅を交渉で取り決める。付け方によっては一撃の蹴りで勝負が決まってしまうこともあるので、不正がないよう、取付け作業は専門の職人が行なう念の入れようだ。

 鶏にタジが付けられると審判が鶏の優劣を見極めてオッズを決め、勝負に乗る参加者を募る。常勝の鶏同士や、海外から輸入した高級種といったスペシャルな顔合わせの場合、1羽あたりに設定される掛け金の総額は日本円換算で数十万円になることもあるという。ちなみに日本の軍鶏(シャモ)は、最強の蹴りを繰り出す憧れの鶏だそうな。

 金額はルピアではなくリンギット(マレーシアの通貨リンギットとは別の物)という伝統的な符牒が使われる。オッズは1:1から最大1:2まで7種類あって、これもすべて専門の符牒だ。

 参加者は自分でオッズを選んで、個人間で勝負することもできる。場外の個人は場内の審判よりも高いオッズを提示して、賭けに出るというわけだ。

鶏の種類は実に多種多彩。タイやフィリビン産をはじめ、日本、ブラジル、アメリカ産の高級種も登場する(写真と本文は関係ありません)【撮影/アピマガジン編集部】

タジェナーの必須事項
呆れるほど素早い暗算能力と交渉力

 審判が基本のオッズを宣言すると、参加者たちは口々に希望のオッズを叫び始める。前述したようにすべてが伝統の符牒で、例えば「ダパン」という符牒は提示者が「9」、賭けに乗る相手が「10」の掛け率を指す。つまり誰かが「ダパン! ダパン! 200リンギット!」と叫んでいたら、「私は乙(劣勢側)に180リンギット賭けます。甲(優勢側)に200リンギット賭ける人はいませんか?」という意味だ。 

 例えば一旦その賭けに乗りながら、同時に鶏と財布の状態を測り、「もっと冒険できるだろう」などと瞬時に考えて、別のオッズを叫び、希望金額を手指の暗号で交渉する。そうしてひとりで同時に2つ3つの賭けに乗る。もたもたしていたら肝心の試合が始まってしまうので、交渉も決断も一瞬だ。

 このように、タジェナーたちはタジェンに特化した能力と集中力を発揮して、勝負に挑む。オッズの符牒と割合、賭けの内容をすべて完全に記憶していることも加味すれば、実に無駄な、もとい非生産的なことにその能力を消費しているようにも思える。

 が、特に前述したようなスペシャルな試合の場合は、掛け自体だけでなく、1日で莫大な現金が動くことになる。見物人を含め大勢の人が集まるから、周囲の市場や商店の売上げも自然と上がる。

 そういった大きな観点では、タジェンは社会に現金を循環させる「経済活動」といえるかもしれない。だが個人に目を向けると、タジェンで破産し家や田畑を失ったという話は、今も昔も枚挙にいとまがないのも事実だ。

 冒頭のタジェナー氏が嘯(うそぶい)たように、タジェンが宗教行事のタブー・ラーだとして、彼らは荒ぶる神に何を捧げているのだろう。経済の循環だろうか。もっと生産的に使えるはずの彼らの能力だろうか。

“Born to be a Cockfighter.”こうしてバリの闘鶏は世代を超えて続いていくのだろう(写真と本文は関係ありません)【撮影/アピマガジン編集部】

(文・撮影/「アピ・マガジン」編集部)

著者紹介:「アピ・マガジン」編集部)
2002年4月バリ島で創刊した日本語フリーペーパー。バリ島を中心にインドネシアの観光&ローカル情報を紹介。アラサー女子編集者たちがリレー形式で執筆。

 

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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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