アベノミクスの成長戦略の中で、構造改革的な政策として唯一評価されているのは国家戦略特区ですが、3月28日にその地域認定が行なわれました。そこに至るまでの裏事情を調べてみると、安倍政権の成長戦略の可能性と限界がよく分かります。

官邸と担当大臣・事務局の温度差

 まず注目すべきは、結果として東京圏、大阪圏、兵庫県養父市、新潟市、福岡市、沖縄県の6ヵ所が認定されたことです。官邸の関係者の話では、国家戦略特区の事務局の側としてはもっと少ない数の地域認定としたかったのを、官邸が押し切って6ヵ所と多くしたようです。

 それでは、事務局はなぜ規制改革の拠点となる認定地域の数を少なくしたかったのでしょうか。非常に情けない話ですが、そもそも規制改革に消極的であることに加え、事務局のマンパワーが足りないのでたくさんの地域に対応できないというのも大きな理由だったようです。かつ、どうやら担当大臣も、そうした官僚的かつどうでもいい理由で改革に消極的な事務局に同調していた節があります。

 この水面下の構造が示しているのは、官邸、即ち安倍首相と菅官房長官は改革をもっと進めたいと考えているのに対して、官僚と担当大臣の側にはそうした気概がないということです。

 官邸のキーパーソン2人が改革を進めようとしているというのは、6月に新たに策定される成長戦略が真っ当な改革政策のパッケージになり得る可能性を示していると思います。

 一方で、官僚や担当大臣にはやる気がないことが明らかになったのは、逆に6月の成長戦略に向けた大きな懸念材料と言わざるを得ません。いくら官邸にやる気があっても、政策の原案を作るのは担当大臣と官僚の側ですので、そこの体制がイマイチでやる気もないとなると、6月の成長戦略も昨年同様に官僚の陳腐な作文で終わる可能性が大きいからです。