フィリピン 2014年4月18日

フィリピンではどんな子育てをしているのか?

母親の度の超えたしつけに、誰が歯止めをかけるか

 話は変わるが、最近ママ・ジェーンのKIANへのしつけが度を超えている。いわゆる箸の上げ下げにまで口を出すといった感じで、その指示も声を荒げたり、心に針を突き刺すような調子で責める。挙句の果ては、「ママの言うことが聞けないの」「ママを愛していないの」といった、日本でもおなじみの決まりの文句だ。

 日本では、いじめや登校拒否、ひきこもり、リストカットなどが社会問題になっているが、フィリピンでは、幸い、いまだほとんど取り沙汰されることはない。

 最近読んだ日本の本で、カウンセリングをしている牧師が、「こうした社会現象は病んだ子ども/若者の心に原因がある」と語っていた。親の過剰な干渉、期待、ストレス(子どもを、自分のストレスのはけ口にする現象)のために、子どもたちは親の叱責は自分の責任であり、親の期待にこたえようと自分を責め、果ては自分を見失ってしまうというのだ。

 まさに目の前でママ・ジェーンのやっていることがそれだと思って話してみても、聞く耳を持たない。自分が母親からも受けた教育が正しいと信じ込んでいるからだ。この辺の事情は日本とまったく同じようだ。

 こんなことでは、せっかくのびのびと育ってきたKIANが、親や人目を気にするだけで、自分で判断して行動ができない、くだらぬでくの棒に育ってしまうと、カーネルの目の前でジェーンを諭した。ジェーンは耳が痛いのか、ほとんど聞こえない振りをしていたが、とりあえずは十分だと判断して話をやめた。

私の部屋でテレビを楽しむ子どもたち。私の部屋では小言はないので、子どもたちはのびのびと時間をすごすことができる【撮影/志賀和民】

 KIANは夜、いつも私の部屋(3階)で他の子どもたちと時間を過ごす。夜も遅くなったので、ジェーンが「下に降りて来い」と2階から声をかけた。ママ・ジェーンの命令は絶対だから、キムも双子(ジェーンの姪)もあわててKIANを2階に戻そうとする。

 KIANは私に背負われて階段を下りるのが好きだから、私の後ろに回っておんぶを催促する。2階のママの部屋に入ってもKIANは私の手をつかんで離そうとしない。パパ・カーネルもいるので、私が遠慮して部屋から出ようとすると、KIANは泣き出してしまった。

 ママ・ジェーンが「そんなにダダがよければ3階に行きなさい」と言うので、再び私の部屋に行ったが、ママ・ジェーンが怖いKIANはやっぱり戻ると言って、私に背負われて2階に降りた。

 しかし、KIANがママとパパの部屋に戻ってから大騒ぎとなってしまった。ママの命令と、私の部屋で遊んでいたいという気持ちの狭間でKIANはパニックとなり、大声で泣き続けたのだ。そして「Mommy said go down(ママが降りて来いと言った)」と、泣きながら繰り返しママを責めた。

 こんな光景を目の当たりにして、いかにママの命令がKIANの負担/トラウマになっているか、このままではKIANの人格が破壊されてしまうと危機感を覚えたのは私ばかりではなく、カーネルも同様だろう。

 こんなことがあって数日後、さすがジェーンも白旗をあげた。パパ・カーネルもジェーンに注意したそうで、これで当面、ジェーン旋風は収まりそうだ。

 核家族で、しかもパパがほとんど家にいない日本の多くの家庭ではママの暴走に歯止めがかからず、子どもたちの人格が破壊されていく。そしてこれが、子どもたちを巻き込むさまざまな社会現象を呼び起こしているのだ。

(文/志賀和民)

著者紹介:志賀和民(しが・かずたみ)
東京出身。東北大学大学院修了後、日揮(株)入社。シンガポールにをかわきりに海外勤務を歴任。1989年日揮関連会社社長に就任しフィリピンに移住。2007年4月PASCO(サロン・デ・パスコ)取締役。

 

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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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