昨年12月、日本商工会議所・金融界・実務家等からなる研究会から「経営者保証に関するガイドライン」が公表され、今年2月1日から適用されている。これまで中小企業の経営者は、銀行借り入れに際して、多くの場合に個人保証を要求されており、いざと言う時には身ぐるみ剥がれるのではないかという恐怖に晒されてきた。経営者の夜逃げや自殺など悲惨な出来事も散見された。今回のガイドラインの制定で、中小企業の経営者は、そうした恐怖から解き放たれ、より思い切った事業展開が出来るようになるのだろうか。

ガイドライン公表の背景

 経営者保証ガイドライン(以下「本ガイドライン」)には、大きく分けて2つの目的がある。1つは、経営者保証に依存しない融資を促進すること、もう1つは、会社の経営が行き詰まった際、経営者の保証債務をどう整理するのかについての実務指針を明確にすることである。

 中小企業の場合には、その多くがオーナー経営者であって、法人と個人の線引きが難しいことが多い。銀行(信金・信組を含む)側では、これらを一体と見なして融資をする方が安心であり、むしろ当然とさえ考えてきたのではないだろうか。その一方で、銀行員も人の子である。その会社の経営が傾いた場合、本当に経営者の自宅や家財道具を奪い、その家族を路頭に迷わせてまで保証の履行(融資の返済)を求めるのか、という葛藤が常にあるはずだ。

 そうなると、結局のところ、ゾンビ企業でも「潰すに潰せない」ということになり、「生かさず、殺さず」の状態が続くことになる。それは日本経済の発展に必要な産業・企業の新陳代謝を阻害する一つの要因である。昨年3月に期限切れを迎えた中小企業金融円滑化法という「悪法」が、金融庁の行政指導によって実質的に継続しているのも、それが一つの原因であると言えるだろう。

経営者保証に依存しない融資の促進

 これを抜本的に改善するには、銀行が、経営者保証に依存しない融資を行なえばよい。ただ、これは、「言うは易く、行うは難し」の典型である。