ビットコインが大きな役割を果たし得る1つの分野は、海外送金だ。

 現在の海外送金のコストは、かなり高い。しかも、利用者が負担すべきコストが必ずしも透明な形で示されていないので、どの程度の負担になっているかさえわからない場合が多い。そこで以下では、現在の国際送金がどのような仕組みで行なわれており、そこにどのような問題があるかを説明することとしよう。

国際送金で何が問題となるか

 国際送金には、国内送金の場合にはないさまざまな問題がある。問題の性質は、取引の種類や送金額などによってかなり違うが、まず最初に貿易決済について考えよう。この場合の問題は、つぎのようなことだ。

(1)取引相手が遠隔地にいるため、情報が十分でない。とくに問題なのは、初めての取引の場合などに、信用がおける相手かどうかがわからないことだ。

(2)商品が相手に届くまでに、かなりの時間がかかる。このため、送金は商品の出荷時か、それとも受取時かが問題となる。

(3)送金者と受取者が異なる通貨圏にいる。

(4)商品が、輸送途中で破損したり失われたりする危険がある。

 これらの問題に対処するため、貿易決済については、昔からさまざまな方法が工夫されてきた。

 以下では、つぎのような仮想例を考えよう。日本の輸出業者の花子は、アメリカにいる輸入業者のアリスに着物を輸出する。その代金をいま手に入れたいとしよう。

 なお、(4)のリスクは、保険によってカバーされるので、以下では考えないこととする。