日米共同声明への「尖閣」明記は
平伏して頼むべきことだったのか

 今回の日米首脳会談は、オバマ大統領自ら尖閣諸島が日米安保条約第5条の適用範囲と明言し、それが共同声明に明記されたことが最大の成果とされる。これに異論はない。

 ただ、一部報道にあるように、TPPについて「前進する道筋を特定した」が一定の具体的内容を伴うものであれば、事実上の基本合意があったのではないかとの疑念も生じる。特に、“尖閣”と引き替えの取り引きならゆゆしきことだ。

 そもそも、“尖閣明記”は、そんなに必死になってお願いすべきことだったのか。

 なぜなら、今回の米大統領のアジア歴訪は当初から同盟強化の旅と言われていた。

「シリア」でも「ウクライナ」でも、オバマ大統領は介入に及び腰で、とりわけ軍事面で腰が引けている大統領として評価されつつあった。

 これでは多くの同盟国が不安になるのは当然だ。いざと言うとき助けてくれない米国では、根本的に考えを改めなければならない。近年に至り米国の威信は大きく揺らいでいたのである。

 尖閣諸島は、「第一列島線」を死守しようとする米国の戦略にとって決定的に重要な位置を占めている。日本の主権にとっても重要だが、米国の世界戦略にとっても同じくらいの重要性がある。

 かねてから米国は、尖閣が日本の施政権下にあり、従って安保条約の適用範囲にあることを明確にしてきた。尖閣諸島が侵害される事態となれば、自衛隊と共に米軍が出動して原状回復を企るのは条約上の義務である。そのためにこそ日本は長い間、米国に広大な基地を提供し、その費用も分担してきたのだ。

 もちろん今回、米大統領が自ら明言した意味は大きい。「結局米国は尖閣を見捨てるのではないか」という不信感もかなり払拭できただろう。

 だが、それは平身低頭してまでお願いするようなことなのか。TPPなど他の重要案件で大きく譲る必要があったのか。私はそうは思わない。