海に“花畑”を蘇えらせる<br />三菱商事の「サンゴ礁保全プロジェクト」
「海の花畑」と言われるサンゴ礁(上の写真)も、衰退するとまるで骨のように「白化」(下の写真)してしまう。現在、こんな光景が世界の海で増え続けているのだ。

  「サンゴ礁と企業」というキーワードを聞けば、「朝日新聞サンゴ礁事件」を思い起こす人が、いまだに多いだろう。1989年、新聞記者が沖縄で自ら落書きをしたサンゴ礁を、あたかも「環境破壊」のように報道したことが発覚し、社会問題となった事件である。

 この事件は、世の心ある企業のサンゴ礁保全熱を、一気に高めるきっかけになったとも言われている。

 さらに最近では、地球温暖化などによる海洋環境の悪化により、世界のサンゴ礁が急速に減り始めていることが報道されている。そのため、全日本空輸や住友生命などの大企業が、続々と本格的な保全活動に乗り出しているのだ。

 そんななか、世界のサンゴ礁研究者からも一目置かれているのが、三菱商事の「サンゴ礁保全プロジェクト」だ。これは、「地球温暖化などの環境変化に適応する仕組みの研究を通じて、サンゴ礁を守り抜こう」という壮大な取り組みだ。

 このプロジェクトは、同社の「戦後大合同からの50周年記念事業」の1つとして2005年にスタートした。1990年代から「熱帯林再生実験プロジェクト」を手がけて来た同社は、この記念すべき節目の年に合わせて、「陸の次は海のエコに取り組もう」と考えたのである。

  「本プロジェクトはビジネスにつなげるものではなく、純粋な社会貢献活動の1つ。年間3000万円以上の予算を組んでいる」(三菱商事)というから、その取り組みはかなり本格的だ。

 そもそも同社が減り続けているサンゴ礁をそこまでして守ろうと思い立ったのは、いったい何故なのか? それは、サンゴ礁が地球環境や人々の生活にとって、なくてはならない存在だからである。

 実は色とりどりのサンゴ礁には、地球上に約50万種いると言われる海洋動物の4分の一が生息していると言われる。CO2を吸収したり、海水を浄化したりする機能もあるため、まさに「海の生物が集う海底の花畑」となっているのだ。