トヨタの北米事業の減速に歯止めがかからない。ゼロ金利キャンペーンも空振りに終わり、ディーラーの中には大規模なリストラに乗り出すところも出てきた。事態は新聞各紙が報じているよりも深刻であり、さなる業績悪化を通じて、日本国内の雇用にも甚大な影響を及ぼしかねない局面を迎えている。

 ニューヨーク株式市場が記録的な下落に見舞われていた10月初旬、トヨタ系ディーラー1237社の関係者が全米各地からラスベガスに集結した。目的は米国トヨタ主催のディーラー会議への参加。新車投入計画に話題が集中する例年とは違い、今年は「目に見えて沈痛な雰囲気のなか、眼先の販売をいかに確保するかに議論が終始した」(ディーラー関係者)という。

 詳しくは後述するが、米国の新車販売はサブプライムローン問題が表面化した2007年春頃から次第に崩れ始め、今年6月以降は2ケタ台の大幅な落ち込みを見せている。トヨタ自動車といえども例外ではなく、大手投資銀行リーマン・ブラザーズの経営破綻に揺れた9月には32.3%減(前年同月比)と単月としては記録的な落ち込みを示した。

 じつはトヨタはこのディーラー年次総会に先立つ10月2日に、北米での新車販売の総崩れに歯止めをかけるべく、主力の「カムリ」や「カローラ」を含む11車種について、“金利なし”でローン販売する「Savaed by Zero」キャンペーンに乗り出したところだった。

 壇上に立った米国金融統括会社トヨタファイナンシャル・サービスのジョージ・ボーストCEO(最高経営責任者)は、自社の信用格付けが自動車金融業界では唯一GEキャピタルと並び「トリプルA」格であることを強調したうえで、景気悪化で貸し倒れがふくらみかねないこの逆風下でも、「販売金融事業を強化する覚悟を示した」(関係者)という。

 このトヨタ側の言動は、ディーラー首脳陣に、「往時のビッグスリーの姿を想起させた」ようだ。

 ゼネラル・モーターズ(GM)、フォード・モーター、クライスラー(当時はダイムラークライスラー)の3社は、米国経済がITバブル崩壊と同時多発テロ後の混乱で景気後退局面に陥っていた2001年秋に、「セーブ・アメリカ」(米国を救え)を旗印に、販売奨励金を大幅に積み増し、ゼロ金利キャンペーンに乗り出したことがある。