橘玲の世界投資見聞録 2014年5月9日

ビザンティン帝国=ギリシアが答えだった
[橘玲の世界投資見聞録]

 こうした都市も最初は地下教会としてつくられたのだから、キリスト教がローマ帝国に公認されれば不要になるはずだが、この地はペルシアやアラブ、トルコなど異民族の侵略に常に晒されており、外敵の脅威が深刻になるにしたがってギリシア人の正教徒たちは逆に地下を掘り進めていった。ワイン製造所が真っ先につくられたのは、それが聖餐に必要だからというよりも、水に毒を入れられることを恐れたからだと考えられている(彼らは井戸を使わずブドウから水分をとったのだ)。

巨大な地下都市、カイマクル            (Photo:©Alt Invest Com)

 

 アナトリア半島の東岸はエーゲ海をはさんでバルカン半島と向いあっており、アテネを発ってエーゲ海を北上し、マラルメ海からボスポラス海峡を抜ければ黒海に至る。古代ギリシア・ローマ時代には、この一帯に海洋民族であるギリシア人の植民都市が次々とつくられた。

 私たちはギリシアというと古代都市アテネのあったバルカン半島南端を思い浮かべるが、アテネとスパルタが覇を競った紀元前5世紀のペロポネソス戦争でポリスは荒廃し、ギリシア文明の中心はシチリアや南イタリア、地中海東岸、黒海南岸などに点在する植民都市に移っていった。

 黒海とエーゲ海を結ぶ海の要衝であるボスポラス海峡に都市が建設されたのは紀元前667年で、彼らの王ビュザンタスにちなんでビュザンティオンと名づけられた。コンスタンティヌス1世の遷都は紀元後330年だから、およそ1000年にわたってここはギリシア人の土地だったことになる。

 476年に西ローマ帝国が滅亡すると、コンスタンティノポリスのひとびとは当然のごとく、自分たちがローマ帝国の正統だと考えた。ところで、そう考えたのはいったい誰だろう。それはいうまでもなく、帝国の首都の住人であったギリシア人だ。だからこそ東ローマ帝国の国教として彼ら(ギリシア人)が奉じていた宗教が「ギリシア正教」と呼ばれるようになった。

 東ローマ帝国はギリシア人の国、というか、ギリシアそのものだった。彼らは最後まで自分たちの国を「ローマ帝国」だと考えていたが、西ヨーロッパにはローマ法王がおり、法王から戴冠を受けた神聖ローマ帝国の皇帝がいたのだから、ギリシア人の国が「ローマ」では都合が悪い。それで西ヨーロッパでは、この帝国を「ビザンティン」と呼ぶようになったのだ。


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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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