2009年、会長兼CEOに松本氏が就任して以来、カルビーは大きく変わった。利益率が改善し、「儲かる会社」へと変わっただけではない。グローバル展開も、長年にわたって交渉を続けながらもなかなかまとまらなかったペプシコとの提携が実現。本格的な取り組みが始まっている。松本氏は、カルビーをどう変えたのか。後編では、グローバル展開、さらには組織文化の変革について聞く。

 

一番はコスト。二番はスピード感。三番はローカライゼーション

――ほとんど進んでいなかったグローバル展開も、本格化させました。

 言葉が悪くて申し訳ないんですが、これまでは趣味の海外事業、でしたね。本格的に海外事業でメシを食わなければ、という考え方はなかったと思います。日本の人口は、今や世界の1.7%しかない。しかも、さらに減っていく。残り98.3%の人口は日本以外ですから、未来の成長を考えたら、打って出るしかない。

 とはいえ、どこでもいいわけではない。まずは、どの国を狙うか。第一フェーズは、北米と中国、韓国、台湾、香港、タイ。第二フェーズは西欧、ロシア、オーストラリア、インドネシア、フィリピン、ベトナム、マレーシアなど。第三フェーズは、今はまだコストが合わないインドやブラジルなど。これを2年ごとに展開していきます。実際には、予定よりちょっと遅れているんですが。

 海外事業で成功しようと思ったら、基本を忘れてはいけません。一番はコスト。高いものは買ってもらえない。二番目はスピード感。三番目は徹底的なローカライゼーション。加えてカルビーの場合、単独で展開する力がなかった。人もいないし、経験もない。これでは失敗する可能性が高い。だから、現地でパートナーを探すんです。基本を確実に押さえれば、あとは、優秀な人を集めて実行するだけです。

――海外事業で成功するポイントを3つ挙げられましたが、日本企業が特に弱いのはどれでしょうか?

 どれも弱いですが、とりわけ弱いのは、ローカライゼーションでしょう。会社をつくるにしても、買収するにしても、任せられずに、つい口を出してしまう。日本人は今も昔も優秀です。でも、まったく進歩していない。この間に、他の国の人たちは進歩しました。だから、追い越されている。日本人は3つの大きな問題を抱えています。まず、他の国の人に比べて、もうあまり優秀ではない。次に、昔の商社マンのようにハードワーカーではない。そして、人件費が高い。何とも使いようがないわけです。

 ところが日本企業は、そんな日本人を現地に送り込む。1人、2人は仕方がないですが、大挙して送り込む。それでうまくいったケースを聞いたことがない。優秀でもない、働きもしない、人件費も高い。これでは不満も出ます。実際、日本人のいない海外事業のほうが、うまくいっている。なのに、多くの日本人がグローバライズされていないから、任せることができない。何か悪いことをされるんじゃないかと考える。でも、外国人は悪いことをする可能性があって、日本人ならやらない、という理屈はどこにもない。

 マネジメントは現地の人に委ねたらいいんです。そのときに一番大事なことは、人の選択の基準をはっきりさせることです。「正直さ」が一番大事。優秀さも必要ですが、優秀な人なら、たくさんいますから。