2014年5月、警視庁などは、ビットコインで覚醒剤を購入し、メキシコから密輸した男を逮捕した。こうしたニュースに接すると、「ビットコインは匿名性を保証することによって反社会的な活動を助長する」という考えを持つ人が多いだろう。

 しかし、こうした評価はあまりに表面的である。そうした考えに囚われていると、仮想通貨革命の本質を見失うことになる。

 ビットコインの基礎にあるブロックチェーンの技術は、信頼性確立のために重要な役割を果たしうるのである。覚醒剤摘発は無視できないニュースだが、それにこだわっていると、社会を進歩させる大きな可能性を潰してしまうことになる。

ブロックチェーンを
存在証明に使う

 ビットコインが匿名性を導入しているのは、取引の安全性を確保するためだ。しかもそれは、「偽匿名性」である。また、非合法的活動への利用は、日銀券でも同じようにある問題だ。

 「ビットコインは反社会的ではない」というのは、こうした消極的な理由だけによるのではない。

 例えば、「存在証明」(proof of existence)というサービスが、2013年5月に始まった。これは、ブロックチェーンを用いて、文書の存在を証明するサービスだ。後になって、その時点でその文書が存在していたと主張することができる。文書は、特定のコンピュータのデータベースやブロックチェーンに格納されるわけではないので、中身が見られることはない。格納するのは文書のハッシュである。手数料は0.005BTCだ。

 これは、これまで公証人が行なっていたことを、分散的な方法で実現したものだ。著作権や特許権に関して、明らかに重要な意味を持ちうる。とくに、先発明主義を採用してきたアメリカでは、「いつ発明したか」は重要だ(ただし、アメリカでも先願主義への移行が見られる)。

 つぎに述べる「アイデンティティ証明」は、もっと根源的な意味で、信頼性確保のための手段を提供する。これは、現段階では構想にすぎない。しかし、実現すれば、社会に大きな影響がある。経済取引だけでなく、政治構造にも影響がある。日本で論議されている国民背番号導入問題にも、本質的な影響を与えうる。