橘玲の世界投資見聞録 2014年5月15日

「キリスト教の正統は、ローマではなくロシアにある」
バチカンが隠ぺいしつづける不都合な歴史
[橘玲の世界投資見聞録]

5つの聖地がたどった道

 キリスト教の画期は、紀元330年にコンスタンティヌス帝が都をコンステンティノポリス(現在のイスタンブール)に移し、キリスト教を公認したことだった。コンスタンティノス帝は、この新しい都を「新ローマ」と呼んだ。

 この遷都によって、ローマ世界にはキリスト教の5つの「聖地」が生まれた。

 イエス自らが布教を行ない殉教したエルサレム、帝国の首都ローマ、初期のキリスト教が拠点としたアレクサンドリアとアンティオキア、そして帝国の新首都であるコンスタンティノポリスだ。

 ローマ帝国の国教となったキリスト教は、第1回のニケヤ公会議(325年)を皮切りに7回の全地公会議によって教義の統一と組織の整備を図ることになる。381年のコンスタンティノポリス公会議では5つの聖地に総主教区を置くとともに、その序列がローマ、コンスタンティノポリス(新ローマ)、アレクサンドリア、アンティオキア、エルサレムと決められた。だがこの頃から、地中海世界を統一した古代ローマの体制(パクス・ロマーナ)が揺らぎ始める。

 まず、4世紀後半から始まったゲルマン民族の大移動によって西ローマ帝国が滅亡(476年)する。これによってローマ総主教区(バチカン)は政治的・軍事的な力をすべて失い危機的状況に立たされる。

 このときバチカンが選んだのは、宗教的権威によって生き残りを図る道だった。そのためには、ローマが「キリスト教の5つの総主教区のひとつ」では都合が悪い。蛮族の王に対して“法王”を名乗るためには、バチカンが神の唯一の「地上での代理人」でなければならない。こうしてローマ総主教区は残りの4つの総主教区から袂を分かちカトリックとなった。

 歴史の次の大きなうねりはムハンマドに始まる7世紀のイスラム勃興だった。アラビア半島を統一した後、エルサレムを征服したイスラム勢力はその勢いで東ローマ帝国を攻めるが頑強な抵抗に会い、進路を南にとってエジプトから北アフリカ、イベリア半島(現在のスペイン)南部にまで勢力を拡げる。これによってキリスト教の5大総主教区のうちエルサレムとアレクサンドリアの2つが異教徒の手に落ち、イスラムと対峙する最前線となったアンティオキアも荒廃・衰退していく。

 北アフリカを失ったことはキリスト教だけでなく、東ローマ帝国にとっても深刻な事態だった。当時の北アフリカはゆたかな穀倉地帯で、コンスタンティノポリスで消費される小麦はエジプトから運ばれてきたからだ。

キエフ大公国のウラジミール大公がギリシア正教を国教に

 南側をイスラム勢力に抑えられてしまった以上、東ローマ帝国もキリスト教も北を目指すほかはない。

 現在のルーマニアやウクライナのある黒海北岸は当時は蛮族の土地だったが、ゲルマン人が西へと移動し、フン族の勢力が衰退すると、北からスラブ民族が流入してくるようになった。東ローマ(ビザンティン)帝国は北方に勢力を伸ばすためにキリスト教の布教にちからを入れ、スラブ民族を馴致してウクライナを新たな穀倉地帯にしようとした。

 8世紀になるとキエフ(現在のウクライナ)にルーシという東スラブ人の国が生まれた。キエフ大公国とも呼ばれるこの国は、10世紀末のウラジミール大公の時代に最盛期を迎える。


幸福の「資本」論|橘玲著 幸福の「資本」論 重版出来!
橘玲著

あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」。あなたが目指すべき人生は?
定価:1,650円(税込) 発行:ダイヤモンド社
購入はコチラ!
世の中の仕組みと人生のデザイン|橘玲のメルマガ配信中! 20日間無料 ザイでしか読めない!橘玲のメルマガ「世の中の仕組みと人生のデザイン」も好評配信中!
月額880円(税込)
いますぐ試す(20日間無料)
 

 

バックナンバー

»関連記事一覧を見る

海外投資必勝マニュアル&本

海外投資のノウハウが凝縮! ここで紹介しているコンテンツ、書籍はすべて、ネットから購入が可能です。さらに「海外投資実践マニュアル」は「海外投資を楽しむ会」の会員になれば割引価格で購入可能です。

作家・橘玲のディープなメルマガ
発売即重版決定! 橘玲の最新刊【幸福の「資本」論】発売!
橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
橘玲×ZAiONLINE海外投資の歩き方
作家・橘玲がメルマガ配信を開始!
subcolumn下影

ページのトップに戻る

本WEBサイトに掲載している全ての記事およびデータについて、その情報源の正確性・確実性・適時性を保証したものではありません。本サイトの提供情報を利用することで被った被害について、当社および情報提供元は一切の責任を負いませ ん。万一、本サイトの提供情報の内容に誤りがあった場合でも、当社および情報提供元は一切責任を負いません。本サイトからアクセス可能な、第三者が運営するサイトのアドレスおよび掲載内容の正確性についても保証するものではなく、このような第三者サイトの利用による損害について、当社は一切責任を負いません。また、併せて下段の「プライバシーポリシー・著作権」もご確認ください。