2006年に中国に移住した大橋さん。蘇州、北京、広州、そして08年からは上海に在住。情報誌の編集長を経て13年9月よりフリーランス。今回は、南シナ海を巡って、関係が悪化する中国とベトナム。中国国内では何が起きているのか。その現状レポートです。
無警戒のベトナム領事館
南シナ海における領土問題をめぐって、ベトナムの反中デモが死傷者が出るほど激化している。それにもかかわらず中国国内ではそれほどの騒ぎにはなっていないし、抗議運動が行なわれたという話も聞かない。昨日(5月16日)、気になって上海のベトナム領事館に足を運んでみたが、いたって平穏だった。
上海では5月20、21の両日、「アジア信頼醸成措置会議首脳会合」(CICA)が開催され、ロシアのプーチン大統領をはじめ各国要人が訪れる。先月から市内の警備は強化され、一部の警官に銃の所持が認められるなど、どことなくピリピリしたムードが漂っている。
そんな最中に反中デモが発生したので、ベトナム領事館もさぞかし厳重な警備が敷かれているに違いないと思っていたが、拍子抜けするほどゆるかった。
日本や欧米の領事館ではカーキ色の制服を着た武装警察が24時間、警備しているのが普通だが、ベトナム領事館の入口には民間の警備会社の警備員と清掃員がひとりずついるだけだった。さすがにいつもより訪れる人は少ないというが、抗議に来る人もいないと警備員は話す。
同館はオフィスビルに入居していて、外観からはその存在がまったくわからない。中国人もほとんど知らないのだろうが、調べればわかることである。


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