橘玲の世界投資見聞録 2014年5月29日

「泥棒も入らない貧乏長屋」と言われた
世界で3番目に小さい国・ナウル共和国の興味深い歴史
[橘玲の世界投資見聞録]

鳥の糞などからできたリン鉱石     ©木村昭二

 国の金庫には現金が溢れ、国民は税金を払う必要がなくなった。国の資金で最新の病院が建てられ、そこで対応できない患者はメルボルンにある有名私立病院に国の資金で転院した。病院の近くには、長期入院患者の家族が滞在できる住宅まで用意された。

 当然のことながら、電気などの各種公共サービスはすべて無料になった。高校生は国費でオーストラリアの高校に通い、大学生になるとアメリカやイギリスの大学に留学できた。

 この当時、ナウルの国民にはトイレ掃除をする必要すらなかった。国が国民のために家政婦を雇ったからだ。

 仕事も家事もないのだから、島民は毎日、レジャーをして暮らした。といっても、魚釣り以外に島でできるのは大型SUVでたった一本の道をぐるぐる回ることくらいだった。

 ナウルの黄金時代には、島民は一家で6、7台の高級車を保有していた。50歳代の元小学校教師は、当時を懐かしんで次のようにいう。

 「道端で車が故障していたの。故障といっても大した故障じゃないのよ。タイヤがパンクしたとか、ガス欠とか、その程度の故障よ。ところが、いったいどうしたと思う? 運転手は道端に車を放置してどこかに行ってしまったの。ときには車のカギをそのへんの人にくれてやることもあったわ。『来週になれば注文した四輪駆動車が港に到着するから、別にいいんだよ』だって!」

 もちろんナウル人も、棚からぼた餅の繁栄がいつまでも続くわけではないことを理解していた。そのため彼らは、ありあまる資金でオーストラリアの不動産を買いあさり、グアムやフィジーにホテルを建て、アメリカのシアトル近くの森林を買い上げ富裕層向けの高級住宅地を開発しようとした。

 ところが1990年代になるとすべてが暗転した。

 まずリン鉱石の価格が下落し、産出量も減ってきた。次に、海外投資の多くが悪徳ブローカーに食いものにされ、巨額の赤字を抱えていることが明らかになった。それにもかかわらず政治家は自分の懐を肥やすことに熱中し、島民も「楽園」の生活を変えることを拒否したため、島の財政は急速に悪化していった。

 こうしてナウルのひとたちは、別の方法でカネを稼ぐしかなくなった。

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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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