就職氷河期から一転、売り手市場に?
足もとで深刻化する人手不足の実体

 最近、様々な分野で「人手が足りない」という声を聞く。ついこの間まで“就活氷河期”などと言われ、新卒の就職活動が熾烈を極めていた頃とは大違いだ。

 企業などからの求人数を職を求める人の数で割った有効求人倍率は、2007年11月から1倍を割り込んでいた。有効求人倍率が1倍を下回るということは、求職者の方が求人数よりも多い、つまり人が余っているという状態だった。

 ところが徐々に求人数が増え始め、2013年11月には約6年ぶりに有効求人倍率が1倍を超えるようになった。その後も上昇傾向が続き、今年4月の有効求人倍率は約7年ぶりとなる1.08倍まで上昇した。つまり、ハローワークに100人の人が職を探しに行っても、108人分の求人がある状況となっている。

 実際に企業の人事担当者などにヒアリングしても、建設、飲食チェーン、流通、介護などの分野で人手不足がかなり深刻化しているようだ。

 人手不足の大元の原因は、働く人の数に対して企業などが求める働き手の数が上回っていることだ。わが国はすでに人口減少局面を迎えていることに加えて、少子高齢化の進展で15歳から64歳までとされる生産年齢人口が減少しており、これからも働き手の数が減少傾向を辿ることが予想される。

 人手不足が進むと、基本的には我々が受け取る給与は増加することになる。それは我々にとっては好ましいが、人手不足が一段と進むようになると、経済活動全体に大きな支障が発生することが考えられる。

 また企業サイドから見ると、人件費の上昇によるコストアップ要因になる。それは、わが国企業の競争力を低下させることにつながりかねない。

 企業にヒアリングしてみると、足もとの人手不足が一般的に言われているより深刻であることがよくわかる。特に建設業や外食チェーンなどは、かなり厳しい状況に追い込まれている。