中国にも「一人ひとりの個性」重視の時代到来 <br />時代の変化は日本の教育産業にチャンスをもたらすか大事そうに抱くぬいぐるみは…… Photo by Konatsu Himeda

 上海の地下鉄2号線の人民広場の駅で、中国人のお母さんがベビーカーを押して車内に入ってきた。見ると、2歳ぐらいの子どもが大事そうにぬいぐるみを抱いている。相当お気に入りの様子だ。そのぬいぐるみをよく見るとそれはあの「しまじろう」だった。

「しまじろう」といえば、幼児教育の教材「こどもちゃれんじ」に使われているトラの子どものキャラクター。日本ではこの「しまじろう」とともに幼児期を過ごした子どもたちは少なくないが、その「しまじろう」が、ここ上海でも人気キャラクターになっているのだ。

 昨今、大手の塾など日本の教育産業が中国に進出している。通信教育最大手の(株)ベネッセコーポレーションが手掛ける幼児向け講座の「こどもちゃれんじ」は、2006年から中国でスタートした。中国でも家庭学習の教材として、この「こどもちゃれんじ」(中国語名は「楽智小天地」)が毎月定期的に宅配されているのだ。

 コンテンツも日本版「こどもちゃれんじ」と共通する部分があり、「友達と仲良くしよう」「自分のことは自分でしよう」など、日々の生活習慣の向上や、家庭内でのしつけを促している。

 その一方で、絵本の中で「しまじろう」が食べているのは「エビフライ」ではなく「火鍋」だったり、「しまじろう」を啓発するのは中国古典に由来する故事成語だったり、あるいは家庭でのお手伝いは「ギョーザづくり」だったりと、すっかり現地化された部分もある。

 利用者の間でも、「毎月届く教材は子どもの成長のためになる内容が盛り込まれている」(医療機関勤務)、「子どもが率先してやりたがる題材が多く、好奇心や創造力を養うことができた」(金融機関勤務)と好評だ。ネットとコールセンター、そして物流を組み合わせた訴求で、すでにその会員は中国全土で60万人に達した。