転職に資格制度は必要か?
テレビ討論での筆者の主張

 政府は非正規雇用で働く人の待遇改善や正社員への登用を進めるため、非正規雇用労働者を対象とした資格制度を創設する方針を固めたという(『読売新聞』6月8日朝刊)。

 新たな資格は、①流通、②派遣、③教育、④健康の4業種で、接客などの対人サービスに従事する人を対象とし、資格の認定には厚労省から委託を受けた業界団体があたる予定で、これまでに日本百貨店協会、日本生産技能労務協会、全国学習塾協会、日本フィットネス産業協会の4団体が政府の方針に応じたとのことだ。

 この仕組みは、上手く行くだろうか?

 筆者は、この資格制度は無駄であり、上手く行かないと考える。

 個人的な経験で恐縮だが、筆者は同類の問題を考えた経験がある。もう何年も前のことだが、「転職」をテーマにしたあるテレビ番組で、制度を重視する左右で言うと左派の学者と議論した。

 多くの人が転職することに肯定的な立論の筆者に対して、テレビ慣れした弁の立つ先生は、そもそも普通の労働者は転職市場での価値がないので、それぞれの職種にあって個々の労働者の職業技能を証明するような制度を作る必要があるとおっしゃった。

 それまで口数的に(口数だけだが)劣勢だった筆者は、「全ての職種の技能を認定するのは手間も大変だし、多くの組織をつくる必要がありますね。国や自治体がやるにせよ、業界団体に公務員が天下るにせよ、役人が大喜びしそうな無駄な仕組みができそうですね」と切り返した。

 すると、さすがに役人が跋扈する醜悪な組織のイメージが湧いたのか、番組のその後にあって、件の学者先生は随分おとなしくなった。