「平成26年財政検証」を見て考える
年金の将来収支予想は非常に楽観的

 6月3日に社会保障審議会年金部会が「平成26年財政検証」を発表した。私たちの年金の将来像が、そこには複数のシナリオとして掲示されている。

 筆者は年金の専門家ではないが、開示された資料を見ながら、表計算ソフトEXCELにデータをダウンロードして、自分なりに年金収支の計算をしてみた。

 結論から申し上げると、2017~2023年度にかけて非常に楽観的な前提で、年金の将来収支が予想されている。用意された複数のシナリオがいずれもうまく行かなかった場合に、年金収支をどう調整していくのだろうかと、疑問を抱かざるを得ない。

 このレポートでは、財政検証そのものの細かい数字を紹介することは差し控えて、重要なポイントだけを押さえたい。

 まず楽観的な前提とは、2014~2023年度までのシミュレーションが、内閣府「経済再生ケース」と「参考ケース」に基づいていることである。財政検証では8つのケースが用意されているが、それは2024年以降のシミュレーションであり、2014~2023年度までの期間については、シナリオはこの2つだけである。

 具体的には「経済再生ケース」は、10年間の平均値で見て消費者物価上昇率が2.22%、名目賃金上昇率3.32%、運用利回り3.24%となっている(図表1参照)。それよりも控えめな「参考ケース」でも、消費者物価1.55%、名目賃金上昇率2.36%、運用利回り2.47%という数字である。2つのシナリオはいずれも楽観的な数字だ。

「平成26年財政検証」の不安<br />公的年金に依存できない未来に備えて<br />――熊野英生・第一生命経済研究所<br />経済調査部 首席エコノミスト

 そうした前提を使って年金収入が計算されたとき、アウトプットされた将来収支はどうなるのか。2012年の厚生年金・共済年金の収支は、▲5.9兆円の赤字という実績である。それに対して「経済再生ケース」では、2018年度に黒字化することになっている(次ページ図表2参照)。「参考ケース」の前提では、2019年度に黒字化できる見通しになっている。