連載第48回で、1993年7月1日に「『TOKYO』~都政50周年記念アルバム~」がBMGビクターから発売されたことについて書いた。東京都が都政50周年を記念して東京にちなんだポップス・アルバムを制作したのである。本田美奈子さんによる歌が1曲収録されている。帝国劇場でロングランしていた「ミス・サイゴン」出演中のことだった。プロデューサーは、昭和の代表的な作曲家、服部良一の長男、服部克久さんである。

服部ファミリー3代の作曲家

 このアルバム「TOKYO」の収録曲10曲の歌手、作詞家、作曲家、編曲者をもう一度並べてみる。太字は今回の登場人物だ。

①TOKYO~instrumental~作曲編曲・服部克久
②I LOVE TOKYO…本田美奈子、作詞・湯川れい子、作曲・小林亜星、編曲・鈴木武
③TOKYOプラスティック少年…男闘呼組、作詞作曲・高橋ヤズカ、編曲・男闘呼組&ゲーリー・チョビ
④デスカルガ東京…ORQUESTA DE LA LUZ、作詞作曲編曲ORQUESTA DE LA LUZ
⑤東京ブギ…GO BANG'S、作詞・鈴木勝、作曲・服部良一、編曲・GO BANG'S
⑥ウナセラディ東京~Vocalise~…佐藤しのぶ、作詞・岩谷時子、作曲・宮川泰、編曲・服部克久
⑦東京の屋根の下…EPO、作詞・佐伯孝夫、作曲・服部良一、編曲・服部隆之
⑧東京マップラップ…作詞・奥山侊仲、作曲編曲・宮川泰
⑨東京ラブソディ…SMOKEY MOUNTAIN、作詞・門田ゆたか、作曲・古賀政男、編曲・堀井勝美
⑩TOKYO~Chorus version~…サーカス、作詞・岡田冨美子、作曲編曲・服部克久

 1993年当時の新作は6曲、過去の作品から4曲が選ばれている。この4曲のオリジナルの歌手と発売年は以下のとおりである(カッコ内はオリジナルの表記)。

5音音階の和風流行歌全盛期の昭和10年代に<br />「ジャズ・ソング」で打って出た服部良一「服部良一 生誕100周年記念企画 僕の音楽人生」(日本コロムビア、2006)3枚組に63曲収録されている。ジャケット写真は服部良一と笠置シヅ子5音音階の和風流行歌全盛期の昭和10年代に<br />「ジャズ・ソング」で打って出た服部良一「音楽畑 オーサーズ ベスト」(服部克久、ワーナーミュージック・ジャパン、2004)90年代から20作以上続いている「音楽畑」シリーズのベスト盤5音音階の和風流行歌全盛期の昭和10年代に<br />「ジャズ・ソング」で打って出た服部良一「日曜劇場 半沢直樹 オリジナル・サウンドトラック」(服部隆之、SMD、2013)服部隆之の代表作

⑤東京ブギ(東京ブギウギ)…笠置シヅ子、作詞・鈴木勝、作編曲・服部良一【1948年・日本コロムビア】
⑥ウナセラディ東京(ウナ・セラ・ディ東京)…ザ・ピーナッツ、作詞・岩谷時子、作曲・宮川泰、編曲・東海林修【1964年、キングレコード】
⑦東京の屋根の下…灰田勝彦、作詞・佐伯孝夫、作編曲・服部良一【1949年、日本ビクター】
⑨東京ラブソディ…藤山一郎、作詞・門田ゆたか、作編曲・古賀政男【1936年、テイチク】

 古賀政男(1904-78)の作品「東京ラプソディ」については連載第48回第49回に書いた。今回からはここで2曲収録されている服部良一(1907-93)について。

 このアルバムの作編曲者のクレジットに服部克久さん(1936-)と服部隆之さん(1965-)の名前があるが、服部良一は克久さんの父、隆之さんの祖父である。つまり、親子3代にわたる作曲家ファミリーなのだ。

 2代目の服部克久さんは歌謡曲やポップスの作曲家というより、映画やテレビのサウンドトラックやコマーシャル、劇場音楽の作曲で知られる。編曲家としても「Music Fair」(フジテレビ)などで長年活躍している。自ら編成したオーケストラによる自作管弦楽作品「音楽畑」シリーズ(ワーナー・ミュージック)でも有名だ。

 3代目の服部隆之さんも克久さんと同様のジャンルで知られる。2013年に驚異的な高視聴率でブームとなったテレビドラマ「半沢直樹」(TBS)のサウンドトラック(SMD)が最近の代表的な作品だろう。