これが成長戦略とは情けない
安倍政権が打ち上げたGPIFの運用改革

 安倍政権がまとめつつある「成長戦略」には、やはりGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用改革が組み込まれている。事の善悪を棚上げして、相場予想だけを考えるなら、GPIFが国内株式を買うことによる株高、外貨建て資産を買うことによる円安(これも株高につながる)は、「一時的には」ある程度の効果を持つだろう。

 効果の大きさは当て推量するしかないが、少し考えてみよう。仮に新しい運用計画の「基本ポートフォリオ」で「国内株式」を現状で保有する約17%から、5%引き上げて22%にするとした場合、GPIF分だけで直接6兆5000億円の日本株買いが発生する。

 これに、GPIFの運用方針に影響を受ける資金(3共済と厚生年金基金)からも買いが発生する。さらに、GPIFのリスクとリターンと最適解計算の論理から見て、日本株のウェイトを上げる場合には、「外国株式」「外国債券」の組み入れも増えるだろう。

 ここから円安と、これによる株高効果が見込める。日経平均にして、かれこれ5000円くらい(全くの当て推量なのでアテにしないほしい)の上昇が「一時的には」あってもおかしくない。「日経平均2万円」なら政府も満足だろう。自慢げに胸を張る安倍首相の姿が、うっすらと目に浮かぶのは気のせいか。

 ただしこうした効果は、9月くらいと予想される新しい運用計画が「発表された後」に表れるわけではない。計画の見直し内容がわかるのと平行して、市場への影響は前倒しで表れはじめる公算が大きい。

 一方政府としては、期待が先走って株価が上がり、「消費税率10%」の可否を安倍首相が決断する年末に化けの皮がはがれて、株価が下がるような展開は避けたいだろう。

 また、過去の経験に鑑みると、公的年金の株式買いは上値を追うようなスタイルではなく、下げを飲み込むような形で、じわじわ進行する公算が大きい。GPIFがポートフォリオの調整にどのくらいの時間をかけるのかはわからないが、しばらく(数ヵ月?)株価が「下がりにくくて上昇しがち」な日々が続いて、買いが止まったところから、だらだらと株価が下がるような展開が予想できる。