8月半ば、オンラインDVDレンタル・サービスのネットフリックスでテクノロジー・インフラが故障、3日間に渡り一部のレンタル予約客への発送ができなくなり、ネット上でひと騒ぎが起こった。

 ただし、騒ぎと言っても悪質な苦情はごく一部。ほとんどは、そのインパクトの大きさに唖然としていたのだ。

 840万人のメンバーを抱えるネットフリックスは、日々200万枚ものDVDを全米の家庭に発送している。レンタル可能なDVDのラインアップは10万タイトル以上。メンバーがこれまでに寄せたDVD作品へのレイティングは20億件にも上っている。
 
 表には見えにくかったが、すでにネットフリックスは確固としたアメリカのDVDレンタル・コミュニティーとなっていた。今回の故障で、まるで牛乳配達のように、ネットフリックスのDVDを毎日待つ家庭がどれほど多いのかを、人々は改めて確認することになったのである。

 実は、インフラがこれまで不具合を起こさなかった方が不思議なくらい、ネットフリックスは微細に入る顧客満足重視のサービスを実現している。今、日本でも宅配DVDレンタル・ビジネスが広まりつつあるが、何を隠そう、その基本形を発案したのがこの会社なのだ。

 仕組みはこうだ。

 まず、ネットフリックスは店を持たない。DVDレンタルはすべてオンラインで行う。借りたDVDは数日後普通郵便で配送され、見終わったら同封の返信用封筒に入れて、郵便ポストに放り込む。わざわざレンタル・ショップに出向かなくてすむ便利さが、第一のセールスポイントだ。同社は全米に50の配送センターを設けているが、これはメンバーの95%が郵便配送で1日の距離内に囲えるように計算された結果だ。

 だが、もっと大きな売りは、レンタルでは前代未聞の料金体系である。定月額制で、入会金も送料も、そしてなんと延滞料もなし。メンバーは一度に借り出しておきたいDVDの数によって料金を選び(1枚なら8.99ドル、5枚なら29.99ドル、8枚なら47.99ドルなど)、必要なだけ手元に置いておける。1枚返送が確認されるごとに、借り出し希望リストの上位にあるDVDを発送してくれるというものだ。