「最近、消費者物価指数が少し上昇したが、われわれは今ノイズを見ているのだと思う」

 イエレンFRB議長は6月18日の記者会見でそう述べた。5月の米国の消費者物価指数前年比は+2.1%だった。2月は+1.1%だったので、急激な上昇だ。しかし、彼女のその発言は、政策金利(フェデラルファンド金利)の引き上げを急ぐつもりは今はないことを意味している。

 多くのFRB幹部は、インフレ率が目標の2%に安定的に達するのに数年かかると予想している。それ故、政策金利の引き上げを来年開始するとしても、雇用がしっかりと回復するまでは、金利水準は長期的な中立水準(3.75%程度)より低い時期が続いて構わない、と彼らは考えている。

 イエレンが言及した「ノイズ」の一つに食料価格がある。5月時点の前年比は、牛肉は+11%、豚肉は+12%だ。干ばつで家畜の飼料となるトウモロコシが不作であり、豚の病気も世界的に発生している。魚は+9%だが、これは漁船の燃料費の上昇が影響しているだろう。柑橘系果物が+23%なのは、メキシコなど主要産地の異常気象にやられているからだ。

 そういった一時的要因による価格上昇は、FRBにとっては「ノイズ」となる。しかし、中低所得層にとっては食費の上昇は切実な問題だ。今回の景気回復局面では、中低所得層の賃金は伸びていないだけになおさらである。

 米商務省の調査によると、肉の値上がりにどう対処しているか? という問いに、3割強が「食費予算を増やす」と答えたものの、3割強が「購入量を減らす」、25%が「他の品の購入を抑える」、1割強が「肉はやめて他の品を買う」と答えていた。

「USA TODAY」紙には、「今まで行かなかった遠くの低所得エリアのスーパーで、低価格食材を買うようになった」とか、「小売店でステーキを2枚買ったら、昨年9月は27ドルだったのに38ドルになった。旦那も私もステーキを食べるのを、週1回から月1回に減らすつもり」といった嘆きが載っていた。