新しいマーケティング
スペシャリストの登場

 ビッグデータを解析する「データサイエンティスト」(Datascientist)という職業と並び、シリコンバレーで脚光浴びているのが「グロースハッカー」(Growth Hacker)という職業です。

 彼らはマーケターとエンジニアの中間のポジションにあって、新しいウェブサービスやアプリなどの初期ユーザーを一気に拡大する役割を担うことから、「ユーザー獲得担当エンジニア」「新しいマーケティングのスペシャリスト」などと称されています。

 コンシューマ向けウェブサービスなどは、他のプロダクトに比べて開発期間が短く、参入障壁が低いケースが多いため、乗り換えのハードルも低く、より優れた同種のサービスが生まれればユーザーはすぐに競合へと鞍替えしてしまいます。

 広告を打ったりキャンペーンを実施して新規ユーザーを増やしたり、既存ユーザーをつなぎ止めるには時間もコストもかかります。そこで、サービスやプロダクトのリリース後、ユーザーの行動履歴などのデータを見ながら、最低限のコストと短いサイクルでユーザーの離脱防止と新規獲得を行うための仮説構築と検証を繰り返しながら、素早くサービスやプロダクトの改善を行うグロースハッカーが、存在感を増して来たというわけです。

 FacebookやTwitter、Quoraなどが急成長した背景には、グロースハッカーたちの優れた仕事があったといいます。2012年のアメリカの大統領選挙で、共和党のロムニー陣営がウェブでの寄付金獲得戦略に優秀なグロースハッカーを起用したこと、13年には、ライアン・ホリディ氏によって『グロースハッカー』が上梓されたことなどにより、ここ1~2年の間で、その名が次第に広く知られるようになりました。

 ホリディ氏は、「グロースハックとは、プロダクト自体を自己永続的マーケティングマシンにすること」と説明しています。

 実際にグロースハックを始める上でよく必要だといわれるのが、「Product-market-fit」(プロダクトマーケットフィット)とコンセプトと、「AARRR」(アー)という戦略のフレームです。