フィリピン在住17年。元・フィリピン退職庁(PRA)ジャパンデスクで、現在は「退職者の ためのなんでも相談所」を運営する志賀さんのフィリピンレポート。今年は日本も記録的な大雨によって多くの被害がもたらされているが、マニラの7月はまさに洪水の季節。その原因のひとつに、投棄されるゴミによって、排水溝がふさがれてしまうことにあるという。政府が考えたその対策は? そして人々の反応は?
7月も半ばを過ぎると、マニラにはいよいよ本格的な雨が降って道路の冠水も日常茶飯事となる。和食レストランやカラオケが集中するリトル東京/マカティ・スクエアあたりはよく道路冠水が起きることで有名だ。
道路冠水の原因はもちろん大雨だが、小一時間ほど強い雨が降るだけで低い場所にある道路は冠水してしまい、いたるところで道路網が寸断される。ジープニーやSUVは水しぶきをあげて走り抜けるが、タクシーなどのセダン車は必死の覚悟が必要だ。いったんエンジンが止まってしまうと、排気口から水が逆流してエンジンがかからなくなってしまうのだ。

10年ほど前にパソンタモ通りでかなり本格的な下水道工事が行なわれたが、効果があったのは1~2年ですぐにもとに戻ってしまった。
そもそもマニラは地形が平坦だから、いくら道路に沿って排水溝を埋設しても、勾配がほとんどないため流速も小さく、土砂やゴミが堆積してすぐにふさがってしまう。フィリピンでは予算の関係か、メンテ(維持管理)というものをほとんどしないから、せっかくの排水溝が宝の持ち腐れになってしまうのだ。
もし適切な勾配を維持しようとしたら、末端で水位が海面以下となって流れる先がなくなってしまう。本来なら地下に大規模な貯留槽をつくってポンプで水をくみ出すなど、大規模な工事が必要になるのだが、そんなことは予算の関係でとてもできない。
しかもフィリピン人の悪い習性として、ゴミを下水に捨てるということがまかり通っている。とくにスコーター(スラム)ではこの傾向が顕著で、行政の頭痛の種となっている。そんなわけで、道路冠水は雨季のマニラの風物誌として不動の地位を守っているのだ。
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